第3話 『アルパイン』の村にて… 上
『アルパイン』の村には、夕方には着いた。
高さ2メートルのレンガで出来た壁が村全体を囲っており、西側にある門が正門のようだ。
村の近くに狩猟者専用の野営地があり、幌馬車や荷馬車が数台並んでいて、数パーティーが野営の準備をしていた。
到着するなり、タイロンが馬車の点検を始める。
アサトらの馬車はいわゆる荷馬車である。
実際は幌馬車だったが、女性もいる事だと言う事で、ポドリアンとグリフが木材を使って頑丈な荷馬車にしてくれた。
長さが3メートル、幅は1メートル50センチ、高さが地面から天井まで2メートル…。
車中の高さは1メートル50センチほどで、取り外し可能な椅子も8脚とテーブルをつけてくれた。
その椅子を利用すれば、中で3人は寝られるようである。だが、椅子で寝るのは、システィナだけと言っていた。
…どうしてなのかは、分からないが…。
ポドリアンは元鍛冶屋だと言う、また、グリフも、この世界に来てから大工仕事を得意としたようであった。
実際、ナガミチの家も、ポドリアンやグリフの力をかりてリフォームしたのだ。
だからと言っちゃ悪いが、安くすんだのはそこに意味があったからだ…。
タイロンも、二人の仕事を手伝い大工仕事を気に入っていた。
なので、馬車の点検と言うか、馬車の維持はタイロンに任せる事にしていたのだ。
アサトとクラウトは、馬を馬小屋に連れて行き、戻ってくるとテントの設置をした。
隣接している調理場で、システィナは晩飯の準備に入った。
『アルパイン』の村には衛兵がいて、西側の正門の他に東にも大きめの門があり、その門も守っていた。
野営地は東門の近くにあり、東門を守る衛兵から、この門を潜るとすぐに商店街があると聞いたので晩飯を食べてから散策へと向かった。
村にしては、タイロンの言う通り人は多かった。
その通りには10件ほどの店が出ており、また、同じ数ほどの露店もあった。
大きな煙突が見える。
話を聞くと、風呂屋みたいであった。
夜8の鐘から入れるようである。なので、一通り店を見物したのち風呂に入る事にした。
入浴料は、銀貨1枚…案外、高いな…と思いながらも入浴をした。
なかは10人程が入れる浴槽が2つあった、体を洗うお湯も浴槽のお湯を使うようである。
話を聞けば、近くの湧水がお湯のようであり、ようは温泉をここに引いているようだった。
ただ、その温泉の温度が低いため、追い炊きしてここに流しているようである。
たしかに、いつも入るお湯よりなんかすべすべしている。
この『アルパイン』は、カマヌハニーで有名だが、温泉でも有名のようだ。
旅の中継地として、狩猟人や商人、または、高貴な方々が旅行や出張の時に、ここを中継所として利用しているようだ。
村の奥には宿屋もあるようだし、飲食店もあるとの事だが、やはり…高いようだ…。
まぁ…お金は持っているけど…、でもそんな事をする為の旅じゃないから…。
秘境とあって、出るマモノも半端ではないと言っていたが、どんなマモノかはわからないようである。
いずれ時間と余裕と力がついたら行ってみたいものだ…。と、3人で話した。
風呂から上がると、すでにシスティナが待っていた。
ほんのり赤くなった肌が、やけに女って感じをだしていたのに、3人はちょっと照れた。
システィナの話しだと、女湯は湯船が3つもあるようだ。
中には泥湯と言う美肌効果がある風呂があったようだ、でも、システィナは入らなかったようである、入らなかった理由を聞いたが、俯いてしまったので聞けなかった…、話せない理由があるようなんだが…。
とにかく、女風呂は混んでいて、入って、洗って、入って出て来た。と言っていた。
男湯はゆっくり話をする余裕があったが、女湯はそうでもないようだ、と言うか、そうなのだろう…女はきれい好きだから…と思う。
野営地に帰ると、いつもの通りにシスティナは馬車の中で寝て、男3人はテントで寝た。
お金と持ち運びに余裕があるとの事で、大きめのテントを購入したので、なかは案外ゆっくり寝られた…と言うか、タイロンが190センチもあり、その巨体からでるいびきは尋常では無かった。
前の村でクラウトは耳栓を購入していたが、やはり気になるのか、時々寝返りを打っていた。
アサトは、2人の間に寝ていたが…寝むれない…ので、テントから出て、ちょっと離れた場所で夜空を見ている。
夜空を埋め尽くす程の星が散らばっている。
今夜の月は新月に近い…もう少しで、また
アサトは、その月を見て思った、また…来るんだと…。
馬車の後ろの扉が開く音が聞こえたので、その方向を見てみると、システィナが外を伺っていた。
なんどか右、左と見渡していたシスティナ…、すると目が合った。
ちょっと恥ずかしそうに身を小さくさせてから、馬車から降りてくると小さく駆け出してくる。
肌着とショートパンツの彼女が動くたびに、形のいい胸が弾んでいた。
それを見入ってしまう…。
今まで、魔法使いのローブ姿しか見ていなかったが、小さな体の割には大きな胸で、腰のラインもしっかりと細かった。
肩までの少し癖のある茶色い髪を小さく弾ませながら、アサトの傍に来てゆっくりと膝を抱えて座った。
「眠れない?」とアサトが聞くと、小さくうなずいて膝に顔を押し当てた。
「僕も…ジャンボさんがうるさくて…」と小さく笑うと、システィナも小さく肩をゆすって笑っていた。
風に誘われて、ほのかに甘い香りが流れてくる…、システィナの方からだ。
アサトはシスティナを見て。
「…なにか…つけているの?」と聞くと、また小さく頷いて…。
「ミオーネ…さんからもらいました。」と言うと、ほんのり頬を赤らめた。
どうやらミオーネさんが、システィナにカマヌの葉で作った石鹸と、香水をくれたのだろう、カマヌハニーに似た香りだとわかった。
ランタンの火が小さく揺れている。
「いい…匂いだね…」と言うと、体を小さくさせる。
「あ…アサト君は…、どうなの…?」と膝から顔を上げて言葉にした。
「どうなのって?」とアサト。
「うん…なんか…、こんなに街から離れた事無かったから…」と言い、膝に顎を乗せた。
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