4#風船で蘇った『羆王』

 「すっかり春だなあ・・・ボマイさん、冬篭りから起きたかなあ?

 秋の事、謝らなきゃな・・・」


 キタキツネのチャンタは、おそるおそる『羆王』ボマイの眠る洞窟へ行ってみた。


 「お目覚めですか?『羆王』様。おはようござ・・・」


 ぷくぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!



 「は、鼻提灯?!」



 ぷくぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!



 「わ、割れるぅーーーー!!」



 洞窟の穴から、巨大な鼻提灯がどんどんどんどんと膨らんでいくのを見付けたキタキツネのチャンタは思わず耳を塞いだ。



 ぷくぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!


 ばぁーーーーーーーーーーーん!!



 「臭っ!!クマの吐息の匂い・・・!!

 まさか?!」


 キタキツネのチャンタは、鼻提灯が膨らんでいった洞窟の穴を覗きこんだ。


 「おーーーーー・・・きーみーはー!!

 キタキツネのチャンタさんだぁーー!!

 おはよーーー!!今冬篭りから起きたとこだよーーーーーー!!」


 「『おはよーーー!!』って・・・鼻提灯が物凄くここまで届くくらいに大きく膨らんでたよーーー!!」


 キタキツネのチャンタは興奮ぎみに言った。


 ・・・この間延びした口調・・・


 ・・・死んだ先代と同じ口調・・・!!


 ・・・それに先代と同じ風貌・・・!!


 ・・・『羆王』ボマイさんが・・・生き写し・・・いや、完全に『羆王』ボマイさんが蘇ったんだ・・・!!


 「逢いたかっぜーーー!!『羆王』!!」


 キタキツネのチャンタは感極まって、涙を流してボマイのモフモフしたお腹を抱き締めて号泣した。


 「ねーーー!おいらーがー起きてーーー、

 とーっても嬉しかったのーーー!

 おいらーー!!『羆王』ボマイだよーー!」


 『羆王』ボマイの口から、割れた風船の吹き口がポロっと堕ちた。


 「あれ?『羆王』、冬篭り中に風船膨らませてたの?」


 「うん・・・!!おいらー、冬篭り中に風船大好きになっちゃったーー!!」


 「おおーーー!!じゃあ、この前の赤い風船まだあるから、一緒にあそぼ!!」


 「じゃあーー、きみーが膨らませてねーー!!おいらじゃー、ひと吹きでパンクしちゃうからーー!!」


 「はいっ!羆王!!」



 ぷぅ~~~~~~~~っ!!


 

 チャンタは吹き口を爪できゅっと結んだ。


 「『羆王』、俺、頑張ってパンパンに膨らませたよ!」


 それから『羆王』のボマイとキツネのチャンタは、一緒にぽーん!ぽーん!と、風船突きして遊んだ。


 「キツネさーん、今年は番はーーー!!」


 「『羆王』、実わ・・・今年は連れのツモちゃんをライバルに取られてあぶれちゃった!!」


 「じゃあ、失恋かーーー!!

 おいらもーーー!!次の跡継ぎの『羆王』の為に雌羆めとらなきゃなーーー!!

 教えるんだーーー風船の・・・」



 ぱぁーーーーん!!



 「ぎゃん!!」


 「ごめーん!!キツネさーん!!風船、爪突っついちゃった!!」




~fin~

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新しい羆王(ボマイ)と形見の風船 アほリ @ahori1970

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