Rei

ともな

第1話

朝日が出る前のボクは1人で歩いている。

人混みがイヤなんだ。

手に持った缶コーヒーを飲みながら、

空を見上げた。


「雨降りそう」


声に出すつもりはなかったけど、

出てたみたいで思ったより響いた。

また同じ1日の始まり。

それがボクの日常。


今日がいつもと違ったのは、

誰もいないはずの建物の影にキミがいたこと。


「何してるの?」


返事がない。

ため息すら出なかったけど、気になって近づいた。

手を伸ばしてキミを触ろうと思ったけど、やめた。

ボクは、巻いていたマフラーを外してキミに巻いた。

少しは暖かいはずだ。

寝ているのか、寝息が聞こえる。


「これは返さなくていいからな」


それだけ言ってボクはその場所から立ち去った。

今日は寒い日だ。

白くなる息をみて、ボクは再び歩き始めた。


冬真っ只中の寒い日のできごと。

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Rei ともな @no-a50

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