10


『ねえユキくーん?』


「んー?」


リビングの方から呼ばれてそっちを覗き込むと、


『私に何か、言うことがあるんじゃない?』


満面の笑みで10円玉を掲げるルナの姿があった。


…あ。


急いでリビングに向かえば、もうそれはそれは満足そうにソファに座っていた。



『で?これはどうしたの?』


なんて楽しそうに笑うかな。


「…参りましたよ。楽屋はルナの言う通りの反応でした。」


素直に謝りながら、反対側に座る。


『ほら見ろ!ファン舐めるなよ~!

…で、こちらのポテチは?』


ルナは、10円玉と一緒に置いてあった袋を手に取る。


「いや、なんか、ね。60円だけってのも微妙かと思って、一応お菓子でも、と思いまして…」


本当はポッキーでも買おうかと思ったものの、たまたま目撃された健ちゃんに

「自分がCMやってるお菓子買って帰る男って、どうなん~?」

なんて茶化され、買えなくなってしまったんだ。


『あははっ!ユキ君らしいなぁ。』


笑いすぎてお腹が痛い、とほとんど泣きそうになりながら、ルナはその辺にあったお菓子の空き缶に60円を入れた。


『ユキ君がここにいる間に、あと幾ら払うことになるかねー。』


「え、また何か賭けんの?」


『もちろん!賭けるよ~。…あ、自信ない?』


「はあ?…もう負けないし。」


『おお~!言うねえ?』



「『……プッ、あははははっ』」


お互いの芝居掛かった物言いに、どちらからともなく笑ってしまう。


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