◆第22話◆「なんだかなぁ、これで決まりだぁぁぁあ!」

「──────ジェイクの怒鳴り声で慣れとるんじゃぁぁああああああ!!」



 ビリビリビリビリビリ……!!



 ビィトも、負けず劣らずの大声量でぶっ放す!

 さすがに、オーガジェネラルのそれとは比べるべくもないが、刈り取られそうになった意識を繋ぎとめるには十分。


「オーガジェネラル。そぅ……カッカすんなよ! まずは頭でも冷やしやがれぇぇえ!」


 魔力最大充填!


 「氷塊」──────発射ッ!!


 外しようにない至近距離で、超低温の氷塊をぶっ放した。

 それは狙い能わずオーガジェネラルに直撃。何とか奴も首を捩って躱そうとしていたが、この距離で外すはずもなし!


「ぐるぁぁあああ!!」


 並のオーガなら着弾点から一気に凍り付くというのに、さすがはオーガジェネラル!


「だったら追加するまでだぁぁぁああ!!」


 右手の火球は維持──────そして、左手には氷塊を追加!!


 半ば凍り付いていたオーガジェネラルのデカい顔の半分だが、徐々に血色を戻している。

 シュウシュウと白煙をあげ、凍りついた箇所を内側から溶かしていく。


 体の中には、焼けつくような熱い血液でも流れているのだろうか?


 奴が何かを叫ぼうとするも──────。


 させるか!

「───おらぁぁぁああああああああ!!」


 ドン! と、オーガジェネラルの角に着地し、そこから超々至近距離で氷塊を次々にぶっ放す!!


 ズドドドドドドッ!! と青白い球体が次々に着弾し、オーガジェネラルの顔が徐々に凍り始める。


「ごるぅ………………!」


 ピキキキキキキ…………!


 だが、奴の体は余りにも巨体にすぎるので前進が凍り付くには至らない。

 強靭な心臓が熱い血液を体中に巡らせるため、いずれは頭部とて回復するだろう。


 完全に顔が凍り付く頃には、オーガジェネラルはニィ───と狂暴な笑みを張り付けたまま呼吸を止めていた……。


 それでも……。


「ビィぃぃぃぃぃぃぃぃいいト!! とどめをさせぇぇぇえ!!」


 あぁ、

「───わかってるよ……」


 コイツはまだ死んでいない。

 仮死でもない。


 とんでもない、タフさだ。


 顔面も脳も凍り付いているだろうに……。

 それでも生きている。


 ビィトに、一矢報いんと左手を振り上げるくらいにはッ!!



 ゴォォォオオオオ!! と、迫りくる高速の拳!!


 これは躱せな──────……!!


「さすがだよ。オーガジェネラル……! さすがのタフネスさだ!!」


 そうとも、これほど至近距離でビィトの魔法を喰らって、まだまだ生きている───。

 だけど、


「だから、『火球』を用意した────! 並の攻撃じゃ効かないことくらいわかっているからな、」


 知ってるか? オーガジェネラルよ……。


「冷たいものを急に熱するとどうなるか?」


 どんなに硬いものでも、極度の低温から、急激に熱すれば──────……!


「これで、トドメだぁぁぁあああ!!」


 魔力最大充填!

 「火球」──────発射ぁぁあ!!


「うらぁぁぁあああああああ!!」


 オーガジェネラルの、渾身の反撃が届く前にビィトの魔法が炸裂する。


 ありふれた下級魔法。


 魔術師なら一番に覚えて使うであろう下級魔法の基礎中の基礎で基本中の基本!!


 「火球ファイヤーボール」だ!!


 それが、凍り付いたオーガジェネラルの顔面に直撃するッ!!


 だが、足りない。

 足りない。


 こいつはあり得ないくらいのタフさを誇る。


 だから、

 足りないなら、連射じゃぁぁぁああああああ!!


「おぅらぁぁぁあああああああ!!」


 火球!

 火球!!


 火球、火球、火球!


「ぶっとべぇやぁぁぁあああああああ!!」


 火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球火球ッ!!


 ズドドドドドドン!!


 と火球が連続して命中し、オーガジェネラルの顔面が物凄い水蒸気を立てて溶けていく。

 だが、それは表皮だけのことで、未だ奴の生命力は依然健在だ!


 それでも──────!!


 凍り付いた頭蓋骨に、高熱源が大量にぶつけられれば──────……カッパーーーーーーーン!!


 盛大に陶器が割れるような音が響いたかと思うと、オーガジェネラルの頭蓋骨がぱっくりと割れていた。


 その頃には、さすがにオーガジェネラルといえど………………。


「ごるぁぁああ!!」


 ば、バカな!!


 ───ガシィ!! と、残った左手でビィトを掴むとギリギリと握りしめる。


 その圧力たるや!!


「うがぁあああ!!……ぐぷッ」


 ギリギリと、骨が軋み、内臓が悲鳴をあげる!

 身体強化で強度をあげていなければ今頃一撃で「ぶぴゅ♪」って感じで死んでいただろう。


「ビィト!?」

「お兄ちゃん!?」

「ビィトさま!?」


 交戦中の三人も、さすがにこれには驚いて声をあげる。

 ビィトがやられれば、この戦いは敗北必須なのだ。


 いくらオーガの兵士を、大量に仕留めても何の意味もない。


 目的はボス。

 そして、鍵の入手だ!


 つまり、全てビィトの双肩にかかっているのだ───……だから、負けるわけにいくかよぉぉぉおおお!!

 

 そうだ。


 負けられない……!!

 こんなところで死ねるか!!


 死にしにていのオーガジェネラルが何だ!

 これしきなら、耐えられるぅぅぅぅうううう!!


「ぐぉぉぉおおおおおお!」

 オーガジェネラルの拘束を逃れようと、ビィトが必死でもがく。


 だが、ここで簡単に拘束を解くような奴ではない───!


 顔面が割れた恐ろしげな表情で、ニヤリと笑うオーガジェネラル。

 タフとか言うレベルではない……!


 だが、奴も限界なのは明白だ。


 割れた頭部から脳漿がドロリと垂れさがっている。


 そして、目が──────グリンと白目をむくッ!


 今だ!

 全力で拘束を解いて──────……。





「え?」

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