第4章「何だかなぁ、脱出するぞ!」

◆第1話◆「なんだかなぁ、どうしようもないな……」

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─── 本編です ───



「ひぃひぃ……」

「おえぇぇ……」


 満身創痍でようやく這い上がった二人。

 あわや、地獄の地底湖にまっ逆さまな所をジェイクの機転とビィトの魔法で回避。


 そうして、不安定な氷山をさらに積み上げて何とか崩れた回廊に到達できた。

 全身全霊、肩で息をする二人───。


 っていうか……!!


「り、リスティ!!」

「クソアマ、てめぇ殺す気か!」


 二人分の殺気をぶつけられながらも、涼しい顔のくそアマ。

 もっさもっさ───と、堅パンを齧りながら悪びれないもしないリスティ。


「バカは死ななきゃ治らないっ、ていうでしょ」


 ポイっと、堅パンの半割れをジェイクに投げ寄越すリスティ。


 思わずそれを受け取ったジェイクだが、


「…………俺は食わん」


 ジッと堅パンを眺めつつ、かなり逡巡していた様子。

 だが、結局は口をつけることなく、力なくそれをビィトに投げ返す。


「はー? なぁにを意地張ってんのよ───バカなの? 死ぬの?」


 呆れた様子で、今度はクッキーを取り出しポーリポリ。

 

 その様子を恨めしそうに見ているジェイク。

 だが、それでもやはりビィトが持ち込んだ物資に手を出す気はないようだ。


「……っていうか、リスティ───それ、エミリィのだよね?!」


 傍と気付いて愕然とするビィト。


 リスティが無造作に抱え込んでる背嚢は、確かにエミリィに持たせたものだ。


「あ゛?!───それが何よ?」


 チッとも悪びれた様子がない。

 相変わらずな妹の様子に、ビィトは二の句が継げなくなる。


「はぁ、もういいよ……」


 とにかく一度戻ろう。


「───リスティ、ジェイクに肩を貸してやってくれ」

「はいな」


 どうせ、ビィトが肩を貸しても拒むだろう。

 散々殴り合いをしてわかったことがある。


 多分…………。

 もう二度と───ビィトはジェイク達のパーティに戻ることはできない。


 そうとも、ビィトにもそのつもりはない。

 どうしたって、お互いに嫌いあい過ぎている。


 とっくにたもとを別ったのだ。


 ビィトも、なんだかんだ言ってジェイクのことが嫌いだ。

 それこそ昔は我慢していたのだが、本音のところではやっぱり好きになれない。


 別に、パーティは仲良しこよしでいる必要はない。そうして、仕事と割り切って付き合うことも出来るだろう。

 だが、ダンジョン探索は命懸けの仕事だ。

 そうなれば、やはり背中を預ける仲間同士信頼関係は必要だ。


 損得で付き合ったとしても、きっとどこか重要な場面で取り返しのつかないことになるに違いない。


「ほら、肩貸しなさいよ」

 項垂れたジェイクをみて、肩を竦めたリスティが、彼に手を差し伸べている。


 普段のジェイクなら突っぱねているのだろうが、強化薬切れの虚脱状態になっているのだろう。


 フラフラのジェイクは、もはや立っているのもやっとの有様だ。


「……お前の施しは───受けん」


 相変わらずの、強情で意地っ張りのジェイク。

 本当は限界だろうに、ここまで意固地とは……───。


 リスティに支えられながら、なんとか立ち上がりジェイク達の拠点へ向かう。


「はぁ───どうしたものかな……」


 散々殴られ、互いに殴りあったために腫れ上がった顔。

 ビィトはその顔のまま、その背を見送り、遅れて追従する。


 それにしても……。


 なんとか救助したいのだが、ジェイクは死んでもビィトから物資を受け取ろうとしなさそうだ。


「──バカは死ななきゃ治らない、か……」


 案外リスティの言っていることが的を得ている気がする。

 まったく、どうしたものか……。


 やっと再会できたというのに、ビィトの心は暗く沈んでしまった。



─── あとがき ───


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