第59話「なんてこった、ヤバい代物が出てきた!」
「お兄ちゃん?」
呆然とするビィトに、エミリィが訝しがり話しかけるも、それでもビィトは固まったまま微動だにしない。
「どうしたの?……それって魔法具?」
そうだよ。
魔法具だよ!
……とんッッでもない魔法具だよ!
「────つ、通信の魔道具だよ……」
「え?」
おい、おい、おい、おい。
おいおいおいおいおいおいおいおい……。
と、とんでもないものが出てきたぞ。
「な、なになに? そんなに驚く事?」
……驚くよ!!
国家機密だよ、これ────!!!
おいそれと、個人で持てるような代物じゃないんだ!
「く、国や──国際機関レベルの組織しか持てない……無茶苦茶に希少な魔道具だよ!」
「えええええ?!」
そうとも……。大手のギルドには普通に設置してあったりするものだから勘違いしがちだが、通信技術は秘匿中の秘匿。
そもそも、一部のダンジョンから極稀に産出されるだけの代物で、人間が作り出すことは不可能。
そして、そのダンジョンも大国が管理している。
なぜなら、「通信」の魔法技術はいまだ解明中。
離れた場所からノータイムで相互コミュニケーションが取れるこの技術は、世界中に技術革命を起こしかねないほどの画期的なものなのだ。
それは、人々の日々のコミュニケーションだけでなく、軍事・行政・商業・教育などのあらゆる分野で活躍するだろう。
それだけに世界に与える影響も大きい。
そのため、とある大国の管理しているダンジョンは厳重に守られている。
幸か不幸か、ダンジョンからでる物に限定されているため、今のところ数には限りがあった。
比較的賢明な国が管理していたことも幸いし、戦争にすら使える技術である通信は危険視されたため、その大国がロット番号を振り厳密に個数を管理しているという。
緊急時の戦力となりうる大手ギルドは、準軍事組織とみなされているため特別に配給されているというが……。
(こんなもの……間違っても、個人が持てる代物じゃないぞ?)
それが何故、「
Sランクパーティであったビィトも、ダンジョン都市のギルドの一室にあるところを一度か二度見たくらいで、実際のところ触ったことはない。
それも、Sランクゆえ優遇されていた措置だ。だからと言って1メンバーに触れられるものではない。
ジェイクなら触ったことはあるかもしれないという程度。ビィトくらいでは遠目にみたことがあるだけ。
──それだけ厳重で、希少なものなのだ。
ビィトやジェイクの故郷の国にも、2~3個程度設置されているくらいだろう。
それも、あるとすれば──王家や大貴族、そしてギルドくらいなものだろうか?
今は政変のせいで、ジェイクやビィトの御家もないため、その通信魔道具たちがどうなっているかは知らない。
(いずれにしても、これは異常事態としか言えないな……)
これがあるということは「
(これは、まいったぞ───)
補給物資をジェイク達に届ければそれで解決するかと思ったけど……。
どうにも一筋縄ではいかない雰囲気。
しかも────だ。
「あいつら……『鬼畜ロリコン』って言いやがった」
「え?」
エミリィが微妙な顔で驚いている。
……いや、別に「鬼畜ロリコン」って言われたことに腹立ててるわけじゃないよ。
ッて、いやいやいや。
腹は立つけどさ────ゴニョゴニョ。
そうじゃなくて……だ。
「そうだよ──」
「さっきからどうしたのお兄ちゃん?……変だよ?」
──
ビィトに不名誉なあだ名がついたのは、「
遭難現場にいた────というか、遭難に関わっていた「
くっそ……何が起こっているんだ?!
ジェイク────。
……お前は無事なんだよな?!
ジェイク!!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます