第70話「なんか風呂にしました」
やばっ!?
っていうか、エミリィの格好やばいわ!!
「早くしろ!!」
うるさいなッ!
ベンがどうやってエミリィを救命したのかは知らないが、胸元とかほとんど全ッ然布切れ残ってないじゃないの!
あぁんの、エロ親父……。
救命だよな?!
救命したんだよな!?
……いや、言うまい!
なんだかんだでエミリィが無事なのでヨシとしよう。
しかし、どうしたものか。
なんかエミリィには申し訳なけど、ベッタベタのまま────あっ。
「ベン! エミリィと俺は池の中の素材を回収する。水は有毒らしいから、お前は外の素材を先に回収してくれ」
そうだよ!
思い付いた俺は天才かもしれない!
……せっかくなので、
「エミリィ。素材回収を手伝ってくれないか? 俺が常に横で解毒魔法をかけ続けるから」
──風呂に入ろうッ!
そう、ビィトの思い付いた名案とは──風呂だ!
とはいえ、この池は有毒らしい。
水がどんな毒かは知らないが、特にビィトには体の異変はない。多分、少しくらいなら大丈夫だろう。
スライムの溶解液のほうが明らかに危険だ。
そも、この水は下流に向かって流れているのだ。
ゴブリン達やアリゲーターフィッシュが利用しているくらいなので猛毒と言うほどでもないと思う。
だが、無毒とも言えない。
判断がつかないのでここは解毒魔法を使う。
そうすれば問題ないはずだ。
エミリィにも回収を手伝ってもらえば体のヌルヌルも落とせて一石二鳥!
「う、うん……えっと、このまま?」
エミリィはタオルを巻いただけの危うい姿だ────あ、うん。
そのままでお願いします。
「(池の水……お湯になってるから。有毒だけど、飲まないように注意して体を洗って?)」
「(お、お湯!? う、うん! ありがとう!)」
お湯と聞いてエミリィは嬉しそう。
グールシューターの巣で体を洗ったのがお気に召していたらしい。
「行くんならさっさといけ! 回収したら、こんな忌々しいダンジョンとはおさらばだ」
へーへーわかりましたよ。
「いこうか、エミリィ」
「うん!」
解毒魔法を掛けつつ、手を握ってエミリィと池に入る。
池はつぼ状なのでドボンと沈み込む。水を飲まないように要注意だ。
彼女の手を引いて、抱き留めるように水に導く。
「ほら、エミリィ!」
ビィトは足からゆっくり池に入ると、エミリィがトプン! と池に入るのを抱き留めた。
入る前に確認した感じでは湯温はちょうどいい感じ。
どこからか伏流があるらしく段々と温度は低下してくるが、水の量は少ないのでしばらくは温まれるだろう。
「きもちいー」
うっとりとした目をするエミリィ。その顔がお湯で上気していて色っぽい。
そのピンクに染まった肌を見てドキリする。
「ど、毒だからね。気を付けて」
ドキドキする心臓を軽く押さえながらエミリィの手を引いてゴールデンスライムの残骸──その体液だかなんだかの小山を掬っていく。
「ベン! なんでもいい器をとってくれ!」
「おいおい! 池中のを回収するんだぞ! どんなに容れ物あっても足りねぇぞ!」
あぁん!?
ベンの奴……ぜ、全部回収しろってか!?
くそッ、
「……わかった、考えがあるから容れ物を!」
一瞬、思案顔になったベンだが、
「これを使え!」
ポーイと投げ寄越したのは──……。
うげっ!
「おま! これ!!」
ベンの奴が寄越した容器……。
ゴブリンの頭蓋骨だった。そのが2、3個。
そういえばスライムに消化されてたゴブリンが何体かいたな。
溶け残ってるとは思っていたけど、気持ち悪ッ!
恨めしげなゴブリンの顔。
くそ、ベンの奴──罰当たりな野郎だ……!
それでも、他に適当な容器はないだろうし仕方ないだろう。
ビィトは息を止めて何度も潜水し、池の底の黄金に輝くゲル状の素材を回収していく。
それをどうするのか────。
掬ったところで、頭蓋骨分しか取れないが……。
「おい! それっぽっちしか──」
「氷塊」
カキンッ。
一瞬で凍るスライムのゲル。
「おぉ??」
こうすれば、しばらくは固体のままもつ。
それを袋に詰めて持っていけばいいという寸法。溶けそうになっても再度凍らせるまで。
「やるじゃねぇか、器用貧乏」
「……いいから、手伝ってくれ」
エミリィには頭蓋骨の中で凍りついているスライム素材を取り出して、ベンに渡す作業をしてもらう。
その間、ローテーションでビィトが頭蓋骨を次々に交換しつつ池の底の素材を回収していった。
何往復したかわからないが、池の水が元の水温に戻るくらいには時間をかけていただろう。
有毒の水に長く使っているのは解毒魔法をかけ続けていてもいいとは思えない。
ん?
あれは…………?
ポイン♪
ゴールデンスライムの主個体が息絶えた場所だろうか。
池の底にドロップアイテムが出現した。
これは────頂きだッ♪
なんだろう。
黄金の……ペンダント?
水底に沈んだそれはキラキラと輝いている。
鎖も装飾も黄金のようだ。
それを拾うと、ろくに確かめず、まずはベンにバレないようにそっと懐に隠した。
「おい!」
ドキンッ!
「な、なんだ!?」
「あと……どのくらいだ?」
ふー……。
「これで仕舞いだ!」
ザパァンと水から上がりざま、ゴブリンの頭部を投げ渡す。
すぐにエミリィを引き上げると、体を拭いて乾燥させた。
「エミリィはこれに着替えて」
ガサゴソと装備品を漁るも、ロクなものがなかったの……。ちょっとアレな代物を渡す。
「え、えっと。お兄ちゃん、これ……」
顔を真っ赤にしたエミリィがジト目でビィトを見る。
「なんだなんだ、器用貧乏、随分積極的じゃないか」
「ち、ちげぇよ! これしかないんだよ!」
そう言ってエミリィに渡した装備──。
────女戦士用のビキニアーマーだ。
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