第27話「なんか罠を回収しました」
おいおい……!
「ベン! 無茶言うなよ。──危険すぎる」
「テメェは、すっこんでろ……」
腹立たしく思いながらも見守るしかできないのだ。
「は、はい…」
若干青ざめながらもエミリィはゆっくりと罠を探し始める。
鉤棒がつつく先にあるのはブービートラップばかりではない。
先頭に立つエミリィは緊張を強いられるだろう。
ビィトもいざという時にフォローに回れるように身構えている。
実際に、エミリィが罠解除に取り組み始めてからいくらも経たないうちに多数の罠が出現した。
チョンチョンと突けば、たちどころに床が抜けて……鋭い針を上に向けた落とし穴……
そこの方では腐ったゴブリンがドロドロに溶けて凄まじい匂いを放っている。
他にも、
カキンと金属の音がしたかと思えば鉤棒ごとガブリと噛みつく虎バサミ……
バネが頑強で人の足くらいなら食いちぎりそうでもある。
あるはあるはで……
妙な引っ掛かりを捕えたと思えば、長い紐がゴブリンどもが潜んでいるに違いない集落の方まで伸びている。
おそらくは
さらには、
棘付きの丸太が降ってくる罠や、毒液らしきものが詰まった壺が左右から振り子の要領で迫って来たり、引き絞った
なるほど、
しばらく冒険者が訪れることがなかったものだから、罠は増える一方というわけ。
だが、残念? なことに、
ベンが欲しがるような冒険者由来の罠は早々ない。とは言え、ちゃっかりと虎バサミは回収しているし、毒液も容器に移し替えている。
そうか、こうやって稼いでいるというわけか……
奴隷にされたことは腹立たしくもあるが、「
「エミリィ……大丈夫か?」
「は、はい…」
気丈にもニコリと笑って返すが、汗はビッショリで顔面蒼白だ。
当然だろう。
罠の解除はそれだけ神経を使うという事。
自分の身が危ないのは当然のこと、仲間の身も案じなければならない。
それをこんな小さな女の子がやっているんだ……
「
……リズは凄かったんだな、と。
とは言え、エミリィの腕が劣っているわけではない。
むしろ、一つとして見落としもなく確実に解除しているところを見ると腕前は一流かもしれない。
ゴブリンの仕掛けた罠くらいで───と思うかもしれないが、このダンジョンのゴブリンはそこらのゴブリンよりも遥かに狂暴で知能も高い。
そのため、罠も巧妙で
実際、ビィトが見てもどこにあるのかさっぱり分からない。
それをエミリィは鉤棒一つで見つけ出し解除していく。
少女の身に着けているスキルとしては飛び抜けているだろう。ベンに至っても信頼しきっているのか、暇を持て余して酒をかっ食らっている始末───
「ガキの仕事の邪魔すんなよ」
まったく気にした様子もないベン。
酒を飲んでいたかと思うと───
今度は懐からキセルを取り出すと、タバコの葉を詰めて悠々と煙を
一見余裕を装っているが……しかし、多少ないし時間がかかり過ぎている事には焦れてきているようだ。
「ベン……罠くらいで欲張るべきじゃない。迂回して先に進んだ方がいい」
このままではエミリィがもたない。それに罠を解除しながらでは進めるものも進めない……
ベンは、最初にボウガンを手に入れたものだから調子乗っているのだろう。
なんだかそれすらも罠に思えてきた。さすがに考え過ぎだろうが。
「チ……口に出されるとやりたくなくなるんだよ! 俺はぁ!」
急に機嫌が悪くなるベンにビィトは、素直に謝る。
「悪かったよ。いくらでも頭は下げるから───」
こういう手合いは下出に出たほうがいい。
「
そもそも、奴隷だ……これが普通なんだろう。
「あー……気分悪いぜ」
そう言いつつも、
「ガキ、……迂回路だ。ここはもういい」
「は、はい!」
なんとか先に進むことを了承してくれた。
罠の道の成果は、
ボウガン×1
虎バサミ×2
毒液、瓶2本分
まぁこれらは全部ベンの懐に入るわけでビィトには銅貨一枚にもならない。
(隙を見てドロップ品を手に入れないと、一生奴隷のままだな)
しかし、ベンがそんなことを見逃すとも思えない。
思ったより奴隷解放の道は狭いのかもしれない……
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