第21話「なんか再会しました」
チュンチュン……
日の射さない奴隷部屋。
昨日クエストをこなしたおかげか、朝イチの仕事は免除されていた。
おかげで遅くまで惰眠を貪ることができたのだが……
朝にチュンチュンと聞いても、別に疚しいことはない。
エミリィと一つ屋根のした。狭い部屋で寄り添って寝ていても
ないったらない。
しかし、幸せな眠りの時間もそう長くは続かない。
バァン!!
翌朝、ビィトは朝一番に叩きおこされた。かと思うと、
「おきろ! 今日はいいもんやるぜ!」
言うが早いか…ビィトの首に極太の首輪をつける。
「は? え?? な、なんだよ急に……!」
なんとまぁ、鎖付きでどう見ても優しくない作り。
「へへへ、今回のダンジョンは、俺が自ら挑戦してやるぜ」
そういうと、
巨大な旅荷物をビィトとエミリィに預けるとさっさと表に出てしまった。
その量は1日二日程度潜るものではなく、ベンが本格的にダンジョンに潜ろうとしていることが分かった。
「おい、ベン!? 説明してくれよ」
ベンが先に立って歩けば、当然目に持つ鎖が伸び切り───、
ビィン! ───「ぐぇ!!」
※
結局、訳もわからぬままベンに引き摺られて歩くしかなかった。
「おら、こい!」
ジャラリと鳴るのはベンが握る極太の鎖だ。
その鎖が鳴るたびにビィトは苦悶に顔を歪める。
「うぐぐ……」
それもそのはず、ビィトの首には今朝がた付けられた金属製の首輪が填められており、そこにその鎖は繋がっているのだ。
断じてそう言うプレイをしているわけではない。
そもそも、呪印で縛っているのだ、鎖の意味はないはず。
ならば、やはりベンの特殊な性癖を満たすプレイ!?
勘弁してくれ……
つけているだけでも息苦しいのに、無理やり引っ張られればさらに苦しいのは明白。
エミリィだけは、ビィトにつかず離れずでオロオロとしている。
助けようにも、
一応、ベンからの拘束はなくなったと言っても、主人たるビィトが拘束されていれば同じことなのだ。
「ひっぱるな……俺は逃げないっ」
苦し気に反抗すると、
「ほっ! 言うじゃねぇか……まぁ、まだ様子見だ。黙って言う事を聞け」
それにな、と続ける。
「俺のスキルと、その鎖があればお前にも利点がある」
ニチャっとした笑みで
ベンの職業は奴隷使い。それは奴隷を扱って戦闘するスタイルで、
いざ戦闘になればパッシブスキルが発動。奴隷の能力値を上昇させる補正が付くらしい。
そして、この鎖も補助アイテムの一種なのだそうだ。
行動範囲は狭くなるが、奴隷に限り身体能力の上昇効果が見込めるマジックアイテムなんだそうだ。
───なるほど、特殊な性癖というわけではないようだ。
「どうだ? いい御主人だろ、ゲハハハ」
と、豪快に笑い飛ばすが、実際拘束されているビィトからすればろくでもない話。
たとえ能力値が上昇しても戦うのはビィトだし、どう考えても得をするのはベンだけだ。
鎖による行動阻害を考えてもプラスマイナス0か、それ以下の気がする。
「分かったら、いけ!」
ドンと背中を押されて進む。
小突かれても背中に
エミリィも……少女に持たせるのはちょっとあり得ないくらいの大荷物。
小さな体がリュックで隠れそうになっている。
「大丈夫か?」
ベンに
「へ、平気……お兄ちゃんに比べれば、全然だよ」
グッと力こぶを作って健全をアピールしているがどう見ても無理をしている。
とはいえ、今のビィトにできることなど……
チラっとベンを窺うと、冒険者ギルド前にできた行列に舌打ちしている所だ。
今ならこっちに注目していない。
そーっと、手を伸ばすと、エミリィのリュックを開けて中身を取り出す。
主な荷物は梱包された携帯食料やら寝具らしい。これならビィトの荷物にも入っているから、少々増えたところでバレたりしないだろう。
「お兄ちゃん?」
不思議そうな顔のエミリィに片目をつぶってアイコンタクト、黙っててねと言う意味を込めて、手早く自分の荷物に混ぜ込んだ。
これで幾分軽くなったはずだ。
俺?
……全然余裕です。
「
場合によっては半年近くダンジョンに潜るのだ。
食料は現地調達するとしても、外でしか入手できないものはすべて持っていくしかない。
そのため、その荷物と来たら……
深層での物資不足は深刻だ。
無限に物資が持てるなら、既に「
だが、物資不足は常に付きまとう。
それこそが、
ビィトがパーティを追い出される原因でもあったのだ。
だから、そんな日々に備えて、鍛えに鍛えた筋力と身体強化の魔法は、たかだか日帰りか数日潜る程度の荷物など苦にもならない。
本当なら、索敵と探索をこなす
今までは、高価な戦闘奴隷を使い潰すことで相当ごり押ししていたんだろう。
高価な奴隷を買う金がどうやって捻出できていたのか知らないが、昨日の手口を見ていると裏で悪どいことをやっているのは間違いなさそうだ。
もっとも、それを知ったところで奴隷のビィトには糾弾することさえできない。
それができるのは自由の身となってから───……
じっと、ベンの背中を睨み付けながら自由への算段を模索していると、
「あら、兄さん」
聞き覚えのある声───いや、知っていて当然の声だ。
「リスティ……」
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