第7話 感謝をこめて

 外に出ようとしたとき、深広の足が動かなくなった。

 少女が深広の肩に手を置いている。

「捕まえたっ!」

 わざとらしく弾んだ声で少女が言う。

「現役時代の深広より、私のほうが足が速かったんだから。ブランクのある深広が私から逃げ切れるわけないじゃん」

「何をする気なの?」


「私が死んだのは深広のおかげで、しなきゃいけないんだよね?」


「やめて。ごめんなさい。許して」

「あはは、私は怒ってないよ。でも、深広を殺さなくちゃいけないみたい」

「お願い、許して。友達でしょ」

「そうだよ。同じ部活でライバル同士だったけど、一番分かり合える親友だと思ってた」

「じゃあ……」

、生きていても辛いだけの深広を、でしょ」

 おどけた声で言い、少女が深広の首に手を回した。

 冷たい感触に、全身の鳥肌が立つ。

 首がじりじりと締め上げられて、息が苦しくなる。

 もがいてももがいても、首を締め付ける手はほどけない。

 恐怖と苦痛に、涙があふれる。

「やめて。助けて」

 何度も懇願したけれど、少女はより強く、掌に力を込めた。

 涙でにじんでいた視界が、だんだんと暗くなっていく。

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