第41話 清廉潔白
「エロい妄想をしていたのは、あった時だけか?答えろ」
「昨晩も、色々頭によぎって、自分で慰めておりました・・・うう」
ほほう。
「詳しく実況しろ」
「命令で身体を動け無くされた後──」
とうとうと語りつつ、手が実演を始めた。
・・・命令が強過ぎたか?
「ふむ・・・手伝ってやろうか?まず感度を100倍くらいに──」
「死んじゃいます?!」
ヴァルナが目を見開く。
死なれるのは困るな。
まあ、なんだかんだで、本番まではしない。
フィンが最初、と約束しているからな。
衣服も乱れてきたし、そろそろ止めるか。
「命令を解除する。自由にしろ」
「はう・・・」
ぺたり、弛緩して、ぐったりする。
「すまん、流石にちょっとやり過ぎたか?」
「いえ、大丈夫です──どうせなら手を出してくれれば、取り決めも言い訳できるのに」
後半、不満を滲ませた声で言う。
取り決め?
「取り決めって?」
「えっ・・・あ、何でも無いですよ?」
何か隠しているな。
「何か有るのか?」
「──言えません。魂にかけて誓った約束です。これを言うくらいなら・・・舌を噛んで死にます」
ヴァルナがキメ顔で言う。
魔族って舌を噛んで死ねるのか?
「舌を噛むな、言え」
「夜伽は順番と決まっていて、毎晩1人ずつチャンスが有ります。本番行為は禁止、本番に繋がる恐れのある行為も禁止ですが、強く求められやむを得ない場合は仕方ないとなっています。夜伽の機会がアピールチャンス、昼間はアピールを自粛する事になっています──鬼ぃ」
俺はお前の兄じゃない。
夜伽て。
そして、順番決めてたのか。
道理で1人ずつ、順になる訳だ。
・・・アピールって、1:3だから、レミア不利じゃね?
「・・・まあ、事情は分かった」
ヴァルナは他に何か隠しているのだろうか。
「他に隠している事は無いか?」
「有りませんよ!何時も清廉潔白、裏表がないヴァルナちゃんです!」
「隠している事が無いか、言え」
「耳が弱いです」
特に無さそうか。
「やっ・・・耳は駄目ですっ・・・駄目だって!」
ガサッ
距離をとられた。
仕方がない、まずは動きを封じて・・・耳の感度も上げてから──
「そう言えば」
ぽつり
ヴァルナが話を切り出す。
話題転換を狙っているのだろうが、そこまで世間は甘くない。
「魔将軍オセ、昼間は言わなかったのですが」
「ん?」
「私を産ませた時の父は、母と共に滅びる事を望んでいました・・・ですが・・・」
ヴァルナは、つと目を伏せると、
「次に再誕した時には、その事は欠片も覚えていませんでした・・・母の事も。私が魔王の娘である、という事実だけは覚えていましたが」
それは・・・
「誰かが、意図的に魔王の記憶を消している?」
俺が尋ねると、
「はい・・・そしてそれが・・・」
ヴァルナが自信無さげに言う。
「魔将軍、オセ、か?」
「はい・・・そもそも、無限再誕が
オセの暗躍、か。
「なら、魔将軍オセを倒せば・・・?」
「はい。正確には、
ヴァルナが重々しく言う。
なるほど。
「・・・魔将軍オセが、魔王を手伝って勇者を倒す事が有る、と言いましたね。あれすら、魔王を真に滅ぼし得る力を持つ者を、恣意的に排除していると疑っています」
本当に強い勇者だけ撃退、か。
なら。
「恐らく・・・ヤツは、ご主人様達の前に立ち塞がる筈です」
ヴァルナが、震えている。
「大丈夫だよ、ヴァルナ。オセ如きに、俺は止められない。お前は──魔王を倒した後、その身体で俺を楽しませる事だけを気にしておけ」
「・・・勿論、分かっています」
それに。
「部下達を、フィンの国に連れて行くんだろ?話の進め方も決めておけよ」
「・・・うん」
多分、ややこしいだろうしな。
フィンが色々助けてくれるとは思うけど。
「ヴァルナ、お前は俺の女だ。お前に出来ない事は、俺がやる。俺を、信じろ」
「うん・・・うん」
ヴァルナが力を抜いている。
そっと抱きしめ、唇を奪った。
フィンも、ヴァルナも・・・マリンも・・・そして、友人であるレミアも。
共に抱く大願、魔王討伐。
そしてその障害、魔将軍オセ。
俺は・・・俺達は、オセを、そして魔王を・・・倒す。
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