第39話 規則逸脱

「・・・流石邪術士。特異職業エクストラクラスは凄いね」


フィンが慄いて呟く。


「いえ、無いですから!邪恋士じゃれんしにそんなスキル無いですから!」


ヴァルナが否定する。

あれ、無いの?


「・・・詠唱破棄とかのスキルもあるので、愛属魔法れんぞくまほう以外のスキルが有るんですか?」


ヴァルナが尋ねる。


「いや、俺の固有能力ユニークスキル愛属魔法れんぞくまほうだけだぞ。詠唱破棄とかは、正確に言うと、魔法連続行使の2回目を強い魔法、1回目をエンハンス等の低消費瞬間発動のスキルにしているだけだ」


「・・・なるほど、流石ダーリン。頭が良いね」


フィンが感心する。


「そう言う問題じゃないんですけどね。愛属魔法れんぞくまほうは、2回続けて、魔法を行使できる。そういうスキルです」


ヴァルナが苦笑して言う。

あれ?


「同じ魔法、なんて制限書いてないぞ?」


「書いて無くてもそうなんです」


ヴァルナが明確に否定する。

できてるけどな。

初級魔法にポイント振りまくったせいか?


拡大解釈エクステンション、ですね」


マリンが言う。

何だよそれ。


「むしろ、規則逸脱チートですね」


ヴァルナが言う。

人を反則行為をする者チーターにするな。


「えっと、何だか知らない用語が飛び交ってるんだけど・・・」


フィンが苦笑いしながら言う。


拡大解釈エクステンションは、本来スキルが想定してない箇所を、自分の有利な様に解釈して、出来る事を増やす行為です。普通は、書いて無くても、ちゃんと法則が有るのですが・・・それを無視して、強行出来てしまいます」


マリンの解説。


「つまり・・・使うと魔力を使う、と書いていなければ、魔力を消費せずに使う、みたいなのか」


俺が感心して言う。


「無視し過ぎ?!そうじゃなくて・・・例えば、魔法なら、威力に関する説明がなければ、本来以上に強く使うとか・・・剣術スキルで、二刀流する事で、両方にスキルを適用するとか・・・限定的な拡大解釈よ」


ヴァルナが否定する。

むう。


「なるほど・・・書かれてないからって、別の魔法繋げるのは・・・拡大解釈の範囲を越えている、と」


フィンが頷く。


「逸脱の範囲、も有りますが、内容にもよりますね。そもそも、職業クラス能力スキルは、ある程度規定されたものを、御神が選ばれた物。どれだけ強力な能力スキルでも、それは御神の掌の上・・・想定通りです。規則逸脱チートは違う・・・御神が想定していない結末を招きます」


ヴァルナがぽつぽつと語る。


「逸脱する存在は、世界から排斥される筈ですが」


マリンが言う。

もう君、ただのメイドって言っても誤魔化せないからね。

フィンがパクパク口を開けている──可愛い。


レミアは凄くニコニコしている。

多分、ついてきてないので誤魔化してる。


「そこをうまく誤魔化す──寛容されるのが、規則逸脱チートの必要条件です。世界から排斥されるのであれば、それはただ単に、御神に喧嘩を売るだけ」


ヴァルナが言う。

うーむ。

つまり、俺が規則逸脱チートしている、と。

規則逸脱チートって、聞こえが悪いな。

まあ、オンラインゲームとかで、運営の想定しない事したら、普通にやってるだけでチート扱いされるから・・・そう言うものなのだろう。


同じ魔法しか連続で使えない、と書かれていないから、別の魔法を繋げられる。

魔法の覚え方が書かれていないから、リストから選んで使う。

ごく普通の思考で辿り着く使い方だが、本来は書いて無くてもできない。

そう言うことだ。


まあ、その結果が、女神様の思惑を外れた結果を引き起こすとは思えないけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る