第34話 罪作りな男

まあ。

ともかく、魔王は滅ぼせない、という事か。


「魔族の中にも、人間と融和し、もしくは隠れ住み、戦いたくない・・・そんな勢力がいるんです。私の部下は、みなそうですね。残念ながら、魔王の定期的復活は、その障害となっています」


ヴァルナが、悔しそうに呟く。


「なるほど。王女たるフィンの将来の夫、エイコクさんに隷属する事で、自分を部下に対する人質にする・・・同時に、部下の安全や立場を保障させる・・・エイコクさんにその身を委ねたのは、計算尽く、という訳ですね」


マリンが頷く。

なるほど、そういう意図か。

確かに、部下の安全と、上手く行けば市民権も得られるだろう。


「え、待って下さい?!勝手に人を計算高い腹黒キャラにしないで頂けますか?!というか、フィンさんは王女様なんですか?!」


ヴァルナが慌てて否定する。

別にそこは隠さなくても良いと思うのだけど。


「・・・そういう意図か。でもまあ、僕としても、魔族との協力はやぶさかでは無い。魔王復活したからといって、そっちに寝返られると困るけどね」


そっか・・・内部に敵を抱え込む可能性があるのか・・・


「それは、大丈夫だと思います。人間であれば、代替わりするでしょうから、難しい部分もあるでしょうが・・・私達魔族は長寿ですからね。次の魔王復活も、その次も、私達は生きています。魔王軍が攻めて来たら、むしろ街を護るのに協力させて頂きます」


不老長寿かあ。


「ヴァルナも結構長く生きているのか?」


「そうですね。かれこれ、500年くらいでしょうか。3回前の魔王が、人間の女性、母と」


500年かあ。


「500年生きてても処女なのか?」


「しょ・・・大樹の処女姫ドライアドっていうのはただの称号であって、その・・・そういうのでは無いんですよ!」


・・・違うのか。


「処女じゃないのか?」


「処女です・・・あっ」


俺の問いかけ──命令に従い、ヴァルナが回答する。

真っ赤になって唸るヴァルナ。

これエロい質問や命令もし放題だな。


「・・・感度を上げるとか、手の甲を性感帯にするとか・・・色々やり放題という訳か」


「後生ですから止めて下さい!」


ヴァルナが叫ぶ。

やっぱり可愛いな。


フィンが何か考え込んでいる。

エロい事か、それとも魔法実験に付き合わせるつもりなのか。


マリンの視線が痛い。

そんなに睨むなよ。

興奮するじゃないか。

その蔑んだような目つきで色々してくれたら・・・


いや、それじゃ俺が変態みたいじゃないか。


まあ、日の高いうちはやらないけどね。


--


「なるほど、魔王の娘、ヴァルナ殿であったか。そなたも、エイコク殿に惹かれて、仲間になった、と。エイコク殿は罪作りな男だ」


レミアは俺の説明を聞いて、納得して頷く。


「・・・私は既に魂を捧げた身。何も申しません」


ヴァルナが項垂れて言う。

大丈夫だよ。

魔王を倒すまでは手を出さない、と思う。


レミアと合流したので、レミアとフィンがヴァルナから情報を引き出す。

魔王軍の構成、防衛戦力の配置・・・


その後、ヴァルナの部下達への、降伏の勧告、部下達の降伏。

一旦はこのまま城に隠れ住み、魔王討伐後にフィンの国を目指す事になった。

市民権を与えるそうだ。


そして・・・


ヴァルナの案内で着いたのは・・・魔竜の巣。

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