第33話 根底なる規則

「エイコクさんの言い方に問題があった様な気がします・・・」


マリンが困った様に呟く。

あれ?


「存在力が高い魔物の棲家であれば、お教えします」


ヴァルナが安心した様に言う。


「それも聞きたいけど、魔王軍の内部情報も欲しいよ」


フィンが言う。

ですよね。


「魔王軍の内部情報なら、お教えしますよ〜」


「良いのか?!」


あっさり言うヴァルナに、思わず突っ込む。


「どうせ命令されれば隠せないですし──それに、出来れば魔王様──父には早く退場して貰いたいのです」


前半は軽い様子で話していたが、途中から声のトーンが下がる。

と言うか、こいつ魔王の娘か。


実の父の死を願うとは、あまり穏便でない話だが・・・


「それは、何故?」


フィンも、訝し気に尋ねる。


「魔族にも、穏便に、ひっそりと暮らしたい者達がいるんです。復活の度に、侵攻を繰り返すのは・・・止めて欲しい・・・」


「復活?」


ヴァルナの言葉に引っかかり、尋ねる。


「ええ。魔王、と呼ばれる存在は、父のみ。魔王ヴリドラは、復活の因果により、復活を繰り返しているんです」


「魔王が復活・・・?毎回姿形も、特性も違うから、別の存在の筈だけど」


フィンが疑問を呈する。

そこまで異なるなら、確かに別人だよな。


「憑依、とか、転生、とかか?」


俺が尋ねる。


「いえ、再誕、が正しいですね。復活の因果・・・魔導具の一種なのですが、それを核に生まれ直します。記憶の継承も、ある程度はするそうです。前回の死から、50年。今回は早かったですね」


ヴァルナの訂正。

再誕かあ。

ヴァルナが続ける。


「酷い娘だとは思いますが・・・もう、父上は十分生きました。そろそろ、安らかに眠って欲しいのです」


ヴァルナが、目を閉じ、呟く。


「人生って言うのは、1度きりだから素晴らしいんです。1度きりだから美しいんです。死を受け入れないのは、間違っています」


マリンが、強い声音で言う。

フィンとヴァルナが、同意して頷く。

転生者がどの口で言うか。


「その魔導具を壊せば、再誕しなくなるのか?」


俺が問うと、


「いえ。アレは魔導具であり、魔導具ではありません。壊せば、別の場所で魔導具が再生します。再出現、かも知れませんが」


おい。

ヴァルナが続ける。


「まだ、魔導阻害の結界で覆った方が有効ですね・・・それでも、せいぜい、数割復活までの期間を延ばすのが関の山です」


復活は止められない、か。


根底なる規則グランドルールに組み込まれている訳ですね」


マリンが良く分からない事を言う。

恐らく、女神様に会った時に教えて貰った用語なのだろう。


「はい、そういう事です」


どういう事だよ。

ヴァルナが肯定する。


「え、グラ・・・?待って、僕の知らない単語が出てきたんだけど」


フィンが焦った様子で口を挟む。

そりゃ、魔導の第一人者的な立場のフィンが知らない単語を、一般市民の宿屋の娘がさらっと口にして。

そして魔王の娘もあっさり受け入れていたら、不自然だよね。

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