第23話 お金目当て

「何の旅の最中かは分かりませんが・・・私は非戦闘職ですよ?!ついていける訳ないじゃないですか?!」


あ、この娘、非戦闘職とか言いながら、実は無双するタイプだな。

転生者に多いタイプだ。


「言いつつ、チートスキル持ちだろ?期待しているぞ」


「剣士の身体能力+商人の計算スキル、非生物のみ格納可能な1部屋分くらいの異空間収納・・・それが私の全てです!」


・・・何・・・だと・・・


「まさか・・・俺と同じ、非戦闘系の能力者とは・・・」


「エイコクさんが戦闘系じゃなければ、世の中の戦闘職がみんな非戦闘職だと思いますよ?!」


・・・愛属チャームしか能が無い魔術師を、何だと思っているんだ。


「いや・・・俺は戦闘職じゃないぞ・・・?俺はハーレムを作る、という事以外は何も出来ない、極めて限定された職業だ」


「・・・ハーレムって・・・それであのお仲間さんですか・・・?」


マリンが唖然として言う。


「成る程・・・あれ・・・でも、さっき凄い魔法でみんなを眠らせてましたよね?」


「いや、あれはただの中級魔法の昏睡付与だな」


「中級魔法であの威力・・・異能での威力上昇とかでしょうか?」


「いや、ああいう魔法」


釈然としない顔をするマリン。

ただ単に、消費と詠唱と触媒が馬鹿げているから誰も使わないだけの、ただの中級魔法だ。


「・・・それで、エイコクさんは、転移者、ですよね」


「そうだ。日本からの転移者だ」


「日本・・・ともかく、転移者で、かつ、お供の方もかなり権力が有るようでした・・・ならば、その受けている任務も尋常な無い筈です。それを聞いてもよろしいですか?」


真剣な、警戒をする様な目で、マリンが言う。

・・・そんな警戒する様な目をしなくても、大丈夫だぞ・・・?


「別に隠しているわけじゃ無い。ただの魔王討伐だ」


「・・・そうですか、魔王討伐ですか・・・は?」


マリンが間抜けな声を出し、そのまま固まる。

ん?


「冗談・・・です・・・ちが・・・え?」


青くなるマリン。

どうした?

まさか魔王ってやばいのか?


「その、最終的に何人集めるつもりか分かりませんが・・・魔王討伐が可能なPT規模じゃないですよね?」


「いや、俺達4人だけで魔王討伐に行くんだぞ?」


マリンが涙目で俺をがくがく揺らす。


「無理ですよ・・・?転移者だから知らないかも知れませんが、魔王ってもの凄く強いんですよ??王家に伝わる神器所持者が精鋭を数千人引き連れ・・・倒した、とかそんな伝説があるくらいなんですから」


単独討伐じゃなかったのか?


「しかも、今回の魔王は、歴代魔王より遥かに強力と言われています。絶対に無理ですからね?幾ら転移者のチートスキル持ちでも・・・十年は準備に時間がかかる筈です」


「ああ・・・そう言えばそんな事を言ってたな」


光森ひかりもり達がそんな事を言われてたっけ。


「とにかく・・・助けて頂いた恩は有りますし、私は貴方に弱みを握られていますが・・・魔王討伐なんて無理難題に参加するのは嫌ですからね」


困ったな・・・


脅迫が通じないのであれば・・・後は愛属チャームに頼るしか・・・

正直、マリンはかなり好みのタイプだし、同じ日本人だし・・・確保しておきたいんだよな。


ドン


マリンの顔の横に手をつき。

耳元で囁く。

所謂、壁ドン。


「マリン・・・お前に選択肢が有ると思っているのか・・・?」


「・・・言いたければ言えば良いですよ」


く・・・


「なら言わせて貰おう」


マリンの耳に口を密着させ、


「マリン、お前が欲しい。一目見た瞬間、運命を感じたんだ。本当は、お前と一緒にいたかっただけなんだ。だから・・・ついてきて欲しい。その体も、力も、俺の為に使って欲しい」


「なっ!」


良し・・・此処で・・・愛属チャームを発動──


「ば、馬鹿ですか、女性を口説こうと思うのなら、もう少し言い方が有るでしょう!」


馬鹿言われた。

・・・どうせ女性に告白した事なんて無いですよ。


「・・・分かりました、少しだけなら付き合っても良いですが・・・その代わり、危険に相応しい報酬は貰いますからね。魔王討伐を目的とする転移者のパーティーなら・・・それなりの稼ぎは有る筈ですよね?」


あれ、ついてきてくれるのか?

なら、愛属チャームの発動は一旦やめておこう。

報酬・・・レミア達、基本的に報酬受け取らないんだよな。

まあ、本人達がお金持ちだし、頼めばそのくらい出してくれるだろう。

特にフィン。


「よろしく、嬉しいよ、マリン」


「か、勘違いしないでくださいね。お金、の為ですからね」


・・・愛属チャームで愛情を強制しているレミアに、お金目的のマリン。

俺の癒しはフィンだけ、か。

・・・俺、魔王討伐が終わったら、愛属チャームを上げまくって、ハーレム築くんだ・・・

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