第22話 売り込み

「え、ま、待って下さい。無理ですよ?!」


マリンが叫ぶ。


「良いのか?キミが見ていない所で・・・俺がうっかり口を滑らせる可能性が有るが・・・?」


ひしっ


マリンが固まり、汗だくだく。


レミアとフィンの顔付きが──雰囲気が変わる。


女性を手に入れるのに、愛属チャームは必須ではない。

ただ、一片の脅迫材料しんじつが有れば、事足りる。

多分、異世界知識使って色々してた事がバレたら、エラい事になる。

空前絶後の大事件の可能性が。


「エイコク殿、何か聞いておくべき事が有るのか?」


レミアが尋ねる。


「あ、あの、私が頼んだんです!外の世界が見てみたいって。ついていきたいって!」


マリンが必死に主張する。

レミアとフィンが驚きに目を見開く。


「好奇心、知識欲は、分かるけど・・・あまりにも突飛。危険過ぎる」


フィンが唖然として言う。

外の世界が見たいからって、魔王討伐についていきたいって人はまずいないよね。


「ほら・・・私は料理も出来ますし・・・洗濯等も任せて下さい・・・」


マリンが食い下がる。


「それは助かるが・・・戦闘で守り切れる保証は無いぞ?」


「大丈夫です。私も職業クラスを授かっておりますので、戦闘はこなせます」


レミアが困惑した声で告げ、マリンが更に食い下がる。

多分、特異職業エクストラクラスだろうなあ。


職業クラスが有るんだね。何の職業クラス?」


「えっと・・・剣士・・・」


フィンが尋ね、マリンが答える。

あれ、特異職業エクストラクラスじゃないのか?


「剣士か」


微妙な顔をするレミアとフィン。


「剣士の、スキル無しバージョン」


「「「スキル無しバージョン?!」」」


マリンの補足情報に、俺達が叫ぶ。

何で無いの。


「で、スキルは商人のスキル」


「・・・特異職業エクストラクラスか・・・微妙な・・・でも、身体能力が高い商人なら、悪くは・・・」


マリンの補足情報に、フィンが思案深気に言う。


「ただし、空間拡張のスキルは覚えません」


「覚えないのか・・・」


更に追加情報。

レミアが残念そうに言う。


「空間拡張の疑似スキルが固有能力ユニークスキルとして有る、程度ですね・・・」


「「固有能力ユニークスキル持ち?!」」


レミアとフィンが驚きの声を上げる。

俺の予想だと、無双できそうな戦闘スキルも持ってそうだけど。

固有能力ユニークスキルって珍しいのだろうか?


「・・・物資を多目に運ぶ事が出来る能力は有り難い。身体能力が剣士相当であれば、エイコク殿と合わせて守る事は難しく無いだろう。成程、エイコク殿はそこまで考えてマリン殿を推薦したんだな」


レミアが頷く。


「レミアの食糧事情は不安があった。助かる」


フィンも頷く。

ですよね。


「マリン殿、よろしく」


レミアが笑顔で言い、


「はい!」


マリンが笑顔で頷いた。


--


「馬鹿なんですか?!」


マリンが涙目で俺の胸ぐらを掴んでくる。


「ど、どうした急に?」


マリンと2人きりになったとたん、この様な事態に。

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