第20話 報連相
まあ。
とりあえず報連相。
連絡の魔導具を取り出すと、コールを押す。
『エイコク殿、どうしたの?』
「フィン・・・ごめん、貴族と揉め事を起こしたっぽくて」
『分かった。でも、相手の地位の剥奪と領地の没収、一族郎党の処刑は、もう少し後で良いかな?』
「ごめん、色々と待って」
色々と待って。
『それで相手は?』
「えっと・・・寝てる」
『分かった。そっちに向かう』
通話が切れる。
「・・・多分、もうすぐ仲間が来ると思うから・・・少し待ってて下さい」
俺はメイドさんと優男、そして他の客に、そう告げた。
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「うん、確かに寝てるね」
つんつん、とレオとやらをつついたフィンが言う。
「綺麗な魔法のかけ方・・・エイコク殿、更に腕を上げたようだね」
フィンが嬉しそうに、笑顔で言う。
「あの・・・」
メイドさんが、困った様にフィンに話しかける。
「気にしないで、もめ事が起きた件は構わない・・・ただ・・・そもそも、何故こんな事が起きたの?」
店の方を見回し、尋ねる。
俺が経緯を説明すると、
「成る程・・・此処の領主はフロスガルと癒着しているのかも知れないね」
フィンが残念そうに言う。
「・・・フレアロルさんからも良く来ます・・・」
店主?
先程責任者っぽく話していた男が項垂れて言う。
「お父様・・・」
「大丈夫、マリン、下がっていなさい」
最初のメイドさんが店主っぽい男に手で制される。
マリンちゃんと言うのか。
「傘下の宿屋が増えたな、とは思っていたけど、そういう事情があったのか」
フィンが頷く。
「そうだな・・・フレアロルもフロスガルも問題有りそうだし・・・今日は此処に泊まるか?」
俺がフィンに尋ねると、
「ん。此処は宿屋でも有るのか・・・なら丁度良いね、そうしようか」
フィンが頷く。
「おい、これはどうした事だ?!」
兵士がぞろぞろと店の前に来る。
「我が息子のレオに乱暴をはたらいた者が居ると聞いたが・・・貴様等か?」
兵士が道を開け、厳ついおっちゃんが入ってくる。
「ああ、トラム。丁度良かった。今、ちょっとした悪い噂を小耳に挟んでね」
フィンが気さくにそう言うと、トラムの方に歩いて行く。
トラムは厳つい顔のままで固まっている。
「おい、貴様、無礼な──」
注意しようとした兵士を、トラムが思いっきり蹴倒す。
「・・・これは・・・フィン様・・・先程振りで・・・ございます・・・」
トラムが青い顔で、膝をつき、頭を垂れた。
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「・・・これは・・・フレアロルで食べた料理より・・・珍しい・・・」
メニューの此処から此処まで1つずつ。
そんな注文をしたレミアが、1口、また1口と、驚き、賞賛しながら食べている。
日本の料理だから懐かしいんだけど・・・それ以上に美味しい。
「有り難うございます」
マリンが頭を下げる。
今日は結局貸し切り状態になった。
俺達以外の宿泊も断らせてしまったのだ。
「これは貴方が料理したの?」
フィンが尋ねると、
「はい、料理は昔から得意なんです」
マリンが微笑む。
「このメイド服もマリンさんが作ったのか?」
「はい、裁縫も得意なんです」
マリンが微笑む。
「メイド服?」
フィンが尋ねる。
あ、メイドって表現、この世界に無いのか。
しまった、という顔をする、俺と──マリン。
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