第19話 ネタスキルの有効活用

「これは、レオさん。俺達は皆、普通に飲んでただけだったんですが・・・こいつが急に剣を突きつけてきて・・・」


「何ぃ?いきなり街の中で刃を取り出すとは・・・恐ろしい犯罪者が居たものだな」


にぃ、男が笑う。

多分、ぐるなんだろうなあ。


「・・・すみません・・・」


優男が青くなって頭を下げる。

メイド達が震えている。


・・・俺なら倒せそうなんだけど・・・


「暴言を吐いたり、店員に嫌がらせをしていたのは、その男達ですよ。その人は、止めようとしただけです」


俺がポイント稼──助け舟を出す。

そう言えば、そもそも剣を抜いてるのって駄目だよなあ。


「あ、アイツも俺をいきなり殴ってきやがったんです」


不意に、暴れていた奴の1人が俺を指して叫ぶ。


何だと?!


「いきなり白昼堂々殴りかかるとは・・・許せんなあ」


レオとやらが俺に嫌らしい笑みを浮かべて言い放つ。

俺あいつらと離れてるんですけど。

殴られた形跡も無いんですけど。


魔法でも使わないと殴れないっつうの。

あ、魔法が使えるから殴れるのか。


「取り敢えず暴れていた奴は連行するが・・・この店の責任も問わねばならないなあ」


「・・・連行されるのは困るから、抵抗はさせて貰うぞ?」


「できるものならしてみろ?」


男がにやり、と笑う。


「強化、昏睡」


ばたり


俺が放った中級魔法の睡眠付与で、暴れていた男達とレオとやらが眠る。


最近気付いたのだが・・・連続魔法って・・・同じ魔法を使う必要は無いらしい。

2回目に使う魔法の、詠唱、消費魔力、触媒、術構成の何たら・・・色々と省略できる、というだけの物らしい。


今やったのは、1つ目が、低消費、瞬間発動の、初級魔法強化。

次に使う魔法の威力を1.1倍に微増させる、それだけの魔法。

2つ目が、睡眠の中級魔法、昏睡。

中級魔法とは言え、その長い詠唱、高い消費魔力・・・コントロールの難しさ、対象拡大時の煩雑さ、複数対象指定のややこしさ・・・そういった癖のある魔法なのだが。

これを全部省略して使えるのだ。

本来ネタでしかない連続魔法や中級魔法の有効活用。


因みに余談だが、本来魔法に存在する、発動前の世界への事象改変・・・これすら省略されるせいで、それを頼りに対抗魔法を使おうとしている魔法の専門家達が、対抗に失敗したりする。

ちゃんと目で見た物に対処しようぜ。


・・・多分、普通は愛属チャームの方を伸ばして、下級魔法を伸ばす奴なんて居ないだろう。

俺、多分、歴代の邪恋士の中で、相当異質だと思う。

是非上級魔法とか覚えたいな。


本来なら、呪いに近い様な深い昏睡に陥るが・・・対象拡大しているので、そこまでの効果は無い。

放っておいても、明日には目覚めるはずだ。


「貴様、何をした?!」


何故か兵士が入ってくる。


「強化、昏睡」


ぱたり、すや


呆然、としているメイドさん達と、優男。


「・・・キミ・・・あのレオ様を・・・」


優男が青い顔で近付いてくる。


レオ・・・様?

ひょっとして・・・貴族とか、そういう類いの・・・


「逃げて下さい!・・・ああ・・・でも・・・昏睡した方達をどうしたら・・・?」


最初のメイドさんが俺の腕を引っ張って逃がそうとした後・・・何やら頭を抱え始める。

しまったな・・・目立つ訳にはいかなかったのだけど・・・

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