第17話 メイド
「この店は面白い物が多いな」
俺が呟く。
色々目移りしてしまう。
「そうか、気に入ったのかい。ねえ、店主、この店の品物を全部──」
「フィン?!」
レミアがフィンの口を塞ぐ。
「どうしたんだ、フィン。朝からおかしいぞ・・・?」
レミアが心配そうに問うが、
「おかしくないよ。僕は冷静さ。熱く燃え盛る程にね」
フィンが応える。
それは冷静なのか?
「・・・さて、そろそろ雑務を片付けてこなければ」
フィンが残念そうに言う。
「私も、見ておきたい物があるからな・・・一旦別れて、用事を済ませようか。合流場所は宿屋で良いな」
朝方に街に着いて・・・今晩はこの街に泊まるらしい。
宿屋・・・絢爛豪華な建物が立ち並ぶ。
「今晩泊まるのはやはり──」
レミアがうっとりと、思いを馳せるように言う。
「フロスガルに」
「フレアロルだな」
レミアとフィンが同時に言う。
「レミア・・・この街に来たら、フロスガルに泊まるべき。歴史有る静謐な建物、重厚な音楽、様々な芸術品・・・」
レミアは頭を振ると、
「フィン・・・私は此処に来たら、フレアロルに泊まると決めている。常に最新を取り入れる建物、美味い料理、絢爛豪華な調度品・・・」
フィンは溜め息をつくと、
「エイコク殿はどちらに泊まりたい?」
俺に尋ねてきた。
「そうだな、エイコク殿に決めてもらうか」
レミアも頷く。
・・・その情報だけでは判断出来ないな。
「分かった。じゃあ、2人が用事済ませている間に、宿泊場所を決めておくよ」
一旦解散する事にした。
--
宿屋は、フロスガルとフレアロルがひたすらでかいようだ。
他の宿も、系列店となっているらしい。
独占、と言う奴だ。
本店は貴族御用達、といった感じで豪華。
もっとも、お金さえ有れば別に貴族でなくても泊まれるらしい。
どうせ行くなら、本店か。
さて、どちらに行くか・・・
「ご主人様〜お帰りなさいませ〜」
声のした方を見ると・・・
メイドさんがいた。
緑色の髪、清楚、穏やか。
そんな印象の女の子。
無論、俺のメイドではない。
店──喫茶店?──の客引きだ。
メイド喫茶、異世界にも有るんだなあ。
豪華な宿に行く前に、腹ごしらえをするか。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
メイドさんが俺に微笑みかけてくる。
「今夜は家ですごされますか?それとも、お食事だけ召し上がりますか?」
「・・・宿泊もできるのか・・・とりあえず、軽食だけ食べたい」
「かしこまりました。皆さん〜、ご主人様のお帰りです〜。軽食をとられるそうです」
「お帰りなさいませ、ご主人様〜」
中にいたメイドさん達の声がハモる。
席に案内され、メニューを見て・・・
スコーンに紅茶、ホットケーキに・・・オムライス、カレー。
ふむ・・・
「厚切りステーキカレーを」
「かしこまりました」
オーダーを取りに来たメイドが、一礼して去っていく。
多分・・・異世界転生者だか、異世界転移者だかが絡んでいるな。
この世界に来て、初めて見たメニューが多い。
客はまばら。
少しくらい話を聞くか。
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