第16話 緩和

「──です」


・・・?

聞き逃した。

何を言ったのだろう?


「フィン、今何って?」


フィンを見ると──耳まで真っ赤になって、視線を逸らしている。

・・・何これ、可愛い。


「まだ・・・貴方の事が・・・好き・・・です」


それはつまり。

愛属チャームが切れて、も?


「フィン・・・嬉しいよ」


「はう・・・」


軽く手を回すと、力が抜ける。

・・・さっきまでの冷静な雰囲気が・・・消えてきた。


「多分、一度恋心を経験した事で、呪いが緩和されたんだと思う・・・」


「フィン・・・」


愛属チャームの影響じゃない。

そう言われて・・・凄く嬉しい。

そして、今まで以上に愛しく感じる。


「私・・・偽りの感情でも良いって思ってた・・・でも・・・本当に貴方が好きだって分かって、凄く嬉しいんです」


フィンが顔を、俺の胸に埋める。


愛属チャームがかかっている時は、苦しいくらいどきどきして・・・でも、今は貴方の温かさが心地良い。今は、このままでいたい」


愛属チャームのかけ直しは、明日にしよう。

流石に、出発前にはやる必要があるけど。


「フィン・・・何時も以上に、愛しいよ。有難うな」


フィンを抱きしめる。


「やあ・・・うう・・・何時もと同じくらいどきどきしてきたよ・・・でも、心地良い」


恐らく、手を出すならチャンスなのだろうけど。

今はただ、フィンの温もりを感じていたかった。


--


魔王領、最近接都市。

此処から先は、都市機能が機能していない。

また、街に上位魔族がいる。

その為、必要な物はなるべく多く買い揃える必要が有る。


魔王領への最終防衛線。

様々な物資が集まり、贅を尽くした建物も多い。

最後の晩餐、とばかりに、散財する者が多いのだ。


俺も、高価な魔法の武具を買い揃えて貰っている。


「・・・やはりエイコク殿には安物は似合わない。領主が龍銀の鎧を所持していた筈だから、徴収しようか」


「色々と待て」


フィンがぽつりと漏らした言葉に、レミアがツッコミを入れる。


「領主の家宝を奪うな、それに、黒獅子の武具なんて着けていたら目立ちすぎるだろう。そもそも、魔術師が装備して軽快に動ける物ではあるまい」


「似合うと思ったのだけど・・・」


「フィン、冗談だとは思うが、ちょっと分かりにくいぞ」


フィンにレミアが、苦々しい口調で言う。

冗談だよな?


俺達には、隠蔽と、認識齟齬の魔法がかかっている。

魔導具の効果だ。

目立たなくする、誰か分かりにくい、程度であるが。


外側も、なるべく一般的な服装。

中にミスリルの鎖帷子を着ている。

・・・オリハルコンの方が丈夫なのだけど、ミスリルの方が軽いのだ。

後はアミュレットやら何やら。


つまり、派手な外見の装備をしていたり、更には有名な装備だったり、不釣り合いな強い装備をつけていたり・・・そういった事は避ける必要が有る。

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