第15話 タイムリミット

野営。

街道沿いを進んでいるが、何時も宿に泊まれる訳ではない。

木陰にて、野営の準備をする。


「今日の食事当番はエイコク殿か。期待できるな」


レミアが言う。


別に、俺が料理上手、と言う訳ではない。

3人とも、料理の腕は似たようなものだ。

可もなく不可もなく。


鳥の魔物の丸焼きに、近くの池で取れた魚の塩焼き。

干し肉や米等は持ち歩いているが、食料は基本的に現地調達だ。

馬車や、商人職がいれば、色々持ち運べるらしいのだけど。


「美味しい」


鳥肉をかじったフィンが言う。


「グレーターランドバード。ランク2の魔物・・・ランクが高いと美味しいって事は有るんだろうか?」


ぱくり。

焼いただけなのに、それなりに美味い。


「この先、何時も食料を現地調達出来るとは限らないけど・・・大丈夫か?」


ふと気になって、尋ねる。

俺とフィンは平均的な日本人の食事量だが・・・レミアはかなり食べるんだよな。


「私は、食べる時は食べるが、食事が少なくても活動は可能だ。戦争時等は、僅かしか食べない」


レミアが答える。

なるほど、そういうものか。


「正直に言えば、商人職を連れて行きたいけど・・・守りきれないね」


フィンが無念そうに言う。

商人職は、職業スキルによって、異空間にアイテムを保管出来るらしい。

いわゆる、アイテムボックス。

高レベルの商人であれば、かなりの量を運ぶとか。


だが、格納量が増えたら、機敏性にマイナスのボーナスがあったり、そもそも高レベルの商人は高齢だったり・・・

旅の足手まといになるとの事だ。


大賢者であれば、空間収納の魔法も使えるらしいが。

俺の中級魔術伸ばしても駄目なんだろうな。

ようやく中級になったが、上級になるまでどれだけ上げないといけないのか。


--


夜。


俺が見張りの時間。

まあ、殺気とかが有れば勝手に起きてくるんだろうけど。


フィンが起きて、横に座る。


昼過ぎ頃からだろうか?

フィンの様子が、何時もと違う気がする。

話し方とか、受け答えがおかしい訳では無いのだけど。

こう・・・違和感。

雰囲気?


そう。

初めて会った時の様な。

冷たさ・・・決して攻撃的では無いし、嫌な感じはしないのだけど。


「フィン、どうかした?少し雰囲気が違うね」


「うん。多分・・・愛属チャームが切れたと思う」


・・・何・・・だと・・・?


「レミアは切れないぞ・・・?」


「多分、魔法抵抗」


淡々と、フィンが答える。

落ち着いた声音だが・・・親しみは感じる。

とりあえず、殺されそうには無い。


魔法抵抗・・・確かに、フィンはレミアより魔法が得意っぽい。

レミアは攻撃魔法しかほぼ使わないが、フィンは回復や各種補助も扱う。

氷属性がメインの様だが、他の属性も使える様だ。

・・・そっか、切れるのが早いか・・・


「自分に残存する魔力が感じられない。愛属チャームは後遺症もなく、完全に溶けたらしい」


つまり。

それは、昨日までと異なる関係。

偽りの恋愛感情は無くなり。

ただの無関係の間柄。


・・・いや。

仲間、協力者、友人・・・その程度には思ってくれてる気はする。

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