第13話 夜這い

一歩踏み出した所で、


「嘘をつくな、フィン。そもそも、麻痺も回避しているだろう」


レミアが冷たく言い放った。

ちくしょう。


--


夜、宿屋にて。


3人部屋でむふふな展開・・・などではない。

1人1部屋。

酷くないか?


ガチャリ


入って来たのは・・・フィン。

思わせぶりな事はするのに、何もさせてくれない。

小悪魔だ。


「やっほ、夜這いに来たよ」


軽い調子で言うフィン。

こいつは・・・


「そうやって思わせぶりな事を言って、また何もさせてくれないんだろ?昼間とか、超消化不良なんだからな」


「男の子にはサービスになると思ったのだけど、難しいね」


フィンが困った様に言う。


「結局、俺からは触れられた事も無いし・・・思わせぶりな言動は良くあっても、裸とかを見せてくれる訳でもないし」


フィンは少し思案すると、


「じゃあさ、今なら僕にしたい事をして良いよ?」


フィンはあっさりそう言うと、目を瞑る。


軽い。

雰囲気出ないなあ。

触るけど。


フィンとの距離を詰め、気づく。

その肌が上気し、呼吸が乱れ・・・汗ばんでいる。

実は、恥ずかしいのか?

目のあたりにしわがよっている。

無理に目を閉じているのだろう。


・・・興奮してきた。


そっと手を伸ばし・・・


「・・・あれ」


ふと気づいたように、フィンが呟く。


「ダーリン、僕の裸、見たよね?」


・・・気づかれた?!


「余すところなく、じっくりと見たよね?」


「フィン・・・」


く・・・こうなったら・・・


「ああ、そうだ。綺麗だった」


「えっ」


「最初見た瞬間、精霊だと思った。至上の美しさ・・・一目惚れ、だったよ」


「や・・・綺麗って、そんな・・・」


フィンの顔が真っ赤に茹で上がる。


「今も、凄く・・・可愛いよ」


フィンの身体に手をまわし、耳元で囁く。


「う・・・きゅう・・・」


フィンが俺に寄り掛かって来る。


はむ


「ふぁ・・・」


くてん・・・


フィンの身体から完全に力が抜けた。


「心臓が破裂しそう・・・身体が熱いよぅ・・・これが・・・好き・・・」


絞り出すように声を出すフィン。


「フィン・・・」


そっと、唇を奪う。

柔らかい。

身体が、汗ばんでいる。

凄く、熱い。


「やら・・・もう・・・」


涙目で見上げるフィン。

そっと、服に手を伸ばし──


「貴様ら、何をしている!」


レミアが入って来た。


俺とフィンが、ジト目でレミアを見る。


「お、お前等、何だその目は・・・?」


レミアが後ずさる。


流石に、続けられる状況では無い。

フィンと顔を見合わせ、溜め息をつくと、


フィンが立ち上がり、レミアの側により、


「レミア・・・無粋な事はしないで欲しい」


「お前等・・・何故、魔王討伐が待てないんだ?!その・・・困るだろ?!」


レミアの言葉に、フィンは首を振ると、


「今日はやや安全日。だから問題無い」


「・・・いや、絶対歯止め効かなくなるだろ?」


レミアの指摘に、


つと、フィンが目を逸らす。

・・・俺も確かに自信が無いな。


「際どい悪戯は目を瞑っていたが・・・一線を越える事だけは思い留まってくれ。頼む。魔王討伐は、そう遠く無い未来だ」


レミアが頭を下げる。


「・・・分かった」


俺は頷いた。


「善処する」


フィンも頷いた。

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