第12話 触手、麻痺、溶解液

「そこの床を踏むと無数の触手が生えてきて、侵入者を麻痺させた後、上から服の繊維を溶かす溶解液が・・・」


フィンの解説。


「まだ家畜荒らしや、子供誘拐は分からないけど・・・屑なのは確からしいな」


レミアが、嫌悪感を露わに言う。


そのトラップは、フィンが氷漬けにしてしまったので、発動出来無い。

しくしく。


「想像、した?」


フィンがぽそっと耳打ちしてくる。

したよ、くそっ。


「鳳凰の羽根よ」


レミアが無数の羽を散らす。

ダンジョン探索用の魔法。

索敵に、罠の探知、宝物の探知、ボスの探知・・・問答無用な便利魔法だ。


塔に入る前にも、簡易な魔法を使ったのだが。

中の空間が歪んでいるらしく、外から見たより広いのだ。


「子供達や家畜が下に捕らわれているな。魔術師は上、か」


レミアが呟く。


「白き兵士よ」


フィンの言葉に、魔法生物の兵士が十数体現われる。


「下に行って、子供達と家畜を解放しなさい」


こくり、兵士達が頷くと、下へと向かって降りていった。

何でも有りだな。


そのまま塔を上る。


上から転がり落ちてくる岩。


「燃えろ」


レミアの言葉に従い、炎の蜥蜴が飛び出て・・・岩を溶かす。


めて」


フィンの言葉に、吹雪が飛び。

溶岩は瞬時に固まり、通れるようになった。


やりたい放題。


ピッ


フィンが床の一部を凍らせる。

そして耳元で、


「無数の鎖に手を取られた女性は、なすすべもなく・・・そこに、無数の手が伸びてきて、体中を」


「ぐぬぬぬ・・・」


エロトラップはあったのに、ひっかかってはくれないらしい。

生殺し過ぎる。


「・・・ただの毒矢だからな?」


レミアのツッコミ。

かつがれた?!


そのまま塔を上り・・・


「良く来た、と褒めてやろう」


塔の屋上で待ち受けていたのは・・・


「魔族?!」


フィンが驚きの声を上げる。


「・・・ふむ?我の正体を看破するとは・・・ぬしら、何者ぞ?」


「僕達は・・・親を殺した魔族に復讐する為だけに生きてきた。ここであったが百年目・・・氷の御手よ!」


フィンが叫び、無数の氷刃を放つ。

が。

魔族は何もしない。

全て、何事もなかったかの様に砕ける。


・・・王級魔法ですら無効化・・・これが魔族。


「風の刃よ!」


俺の魔法が飛ぶが・・・今度は見向きもしない。

当然魔族の髪一つ動かせない。


「人間は数多殺したが・・・誰を殺したか覚えておらんでな。だが、なかなかの魔力・・・実験の素体には都合が良さそうであるな」


ゴウッ


魔族の目が怪しく光る・・・これは・・・麻痺呪縛。


「しま・・・っ」


フィンが失態を口にする。

ちなみに、俺は放置プレイ。


「どれ、顔を見せて貰おうか」


魔族が一歩踏み出し・・・


ひょこ


腹から、紅い光が生える。


「ぬ・・・ぐ・・・?」


ボッ


炎上、塵となって散る。


真の力を発揮した神器でないと魔族は倒せないが。

かといって、正面から使っては、情報が漏れる可能性が有る。

フィンが気を引いている間に、レミアがとどめを刺したのだ。


「・・・く・・・体が・・・動かない・・・これでは・・・エイコク殿に何をされても抵抗できない・・・」


何・・・だと・・・?


ごくり

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