第9話 何処かの魔神

「効かない」


冷徹に告げる少女・・・その目が見開かれる。


「・・・な・・・?」


顔が・・・体が真っ赤になり、ふらつく。

良し・・・このまま・・・逃げる!

惜しいけど!


離脱しようとしたら、足が何かにとられ・・・しま・・・え。

俺の足を、分厚い氷が覆っていた。


何これええええ?!


「キミ・・・何・・・したの・・・?」


光る目で俺を睨む。

やばい・・・殺される・・・


「体が熱い・・・」


凄い力で抱き寄せられる。

・・・効いてる?!

これ、俺の魔力が増えているせいで、レミアの時より大変な事に?!


「離してくれ・・・そういう事する女性は、『嫌い』だ」


力が緩む。

俺の魔法の支配下に有る者は、『嫌い』という単語に強く反応する。


「ごめん・・・なさい・・・」


さて・・・どうしたものか・・・

可能な限り、俺の愛属チャームの事は秘密にしておきたい。

レミアの神器が解放されている事・・・それを魔王軍に知られる訳にはいかないからだ。


「その魔法は、程なく解ける」


嘘だけど。

多分凄く長く続くけど。


「だから、此処は見逃して欲しい。裸を見たのは悪かった」


「貴方なら、見ても良いよ・・・?」


「見たのは悪かった」


誘惑に超負けそうになる。

精霊と勘違いしたくらい、この姉ちゃんも魅力的過ぎる。


「この状態異常が何か、教えて欲しい」


・・・恋愛、とか言ったら、ばれるよな。


「胸が張り裂けそうで・・・貴方を見たくて、貴方に見られたくて・・・貴方の傍にいたくて・・・貴方と一緒になりたくて・・・苦しい・・・」


そこまで分析できているなら、正解に辿り着けよ。


「おかしい・・・こんなの・・・まるで・・・恋」


分かってるじゃねえか。


「とにかく、悪いが機密情報なんだ。此処は、見逃してくれ。本当に・・・本当に、重要な情報なんだ・・・」


「・・・察するに、貴方は、誰かの為に、何かの為に、その情報を秘めている?」


「・・・そうだ」


「・・・紅い?」


「?!」


何これ。

警戒しながら答えてたのに、何で2つ目に特定されそうな質問来るの?!

何処かの魔神かよ!


「分かった、今は聞かない。多分・・・また会うと思う。行って良いよ」


会わないと思うけど。


「ほんと・・・ごめん!」


改めて謝罪すると、俺は森の出口へと向かった。


--


「何処に行ってたんだ?!」


宿に戻ると、泣きそうな顔でレミアが迫ってきた。


「悪い、レミア・・・俺頼りないからさ・・・少し自分でもレベル上げをしておこうと・・・」


「私が倒した敵の存在力が、半分お前に行っている筈だろ?!」


経験値は存在力と言うらしい。

そしてやっぱり半分きてたのか。


「戦闘の勘とか、そういうのをだな・・・」


「私達が護るから大丈夫だ!」


じゃあスキルポイントを愛属チャームに振らせてくれよ。

レベルアップってどんどんし辛くなるから、後からあげるの大変なんだぞ?


「とにかく・・・明日約束を取り付けたから・・・幼馴染と会える筈だ・・・きっと力になってくれる・・・はず・・・」


がちゃり


扉が開き。

護衛だろう。

兵士を従え、入ってきたのは。


美しい、青白い鎧に身を包んだ・・・


さっきの女性。

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