第8話 パラライズ

「助っ人?」


「ああ、そうだ。魔王領に入る前に寄り道をする。そこで、幼馴染の助力を願おうと思っている。私か、そいつか、どちらかが攻撃し、どちらかがお前を護る。・・・というか、そいつの能力は、防御に向いているんだけどな」


レミアが苦々しく言う。

仲が悪いのだろうか。


「・・・お前と2人きりの旅じゃ無くなるのが、非常に不満だが」


レミア直球なんだよね。


愛属チャームの欠点。

それが愛属チャームによるものだと分かっていたら、理性でブレーキをかける事ができる。

ネタバラシさえしなければなあ・・・


にしても、愛属チャームが段々強まっている、と言っていたのは何故だろう。

スキルポイントは、下級魔法に全振りしているのだけど。

俺自身の魔力が上がっているから、なんだろうな。


「私は、連絡を取るため、少し出かける。悪いが、少し待っていてくれ」


「分かった」


さて・・・幼馴染、か。

ひょっとしたら、婚約者?

超イケメン君なのだろうか。


今日泊まる宿は決めたし・・・夕方に合流すれば良いだろう。

それまで、少しでも・・・自分を磨こう。

心も、強く持たないと。


報酬より、レミアが欲しい。

結局、それが正直な所なのだ。

それが適わないのは、分かっているのだけど。


--


「水の槍よ!」


俺の魔法が、毒蜂を貫く。

まあ、1メートルくらいあるから、的は大きい。

リベンジ成功。


俺1人で倒した時と、レミアと組んでいてレミアが倒した時。

流れ込む経験値っぽいのが・・・だいたい2倍くらいだ。

恐らく、パーティー公平分配、的な感じで、パーティー内で等分するシステムなのだろう。

俺、超レベリングされてる。

贅沢な立場なのだろうな。


初級魔術をせっせと上げた結果、そろそろ中級魔術に手が届きそうだ。

恐らく、あり得ないペースなのだろう。


ひょいっと


死角から飛び出したオークの槍を避け、


「火炎球、火炎球」


2連打。

オークはなすすべもなく焼失する。

本来あり得ないタイミングで2つ目の魔法が来る、それに対抗できない者は多いらしい。


因みに、魔法の名前自体にあまり意味はない。

あまり関係ない名前を叫ぶのも、イメージが乱れるけど。

魔法の前に、詠唱や呪文構成、イメージ構築・・・色々やっているのだ。


ちゃぷ・・・


水の音。

何だろう。


気配を殺す魔法を2重に発動。

草をかき分け、進んだ先。


そこに、精霊が居た。


蒼く透き通った髪。

蒼い目。

耳は・・・人間っぽい。

肌の色も人間っぽい。

目は、訝しげな目。

その肌に身につけている物は無く。


「・・・覗き?」


・・・え、精霊じゃ無い?

裸とか気にする系の・・・

やば・・・

此処で問題を起こす訳には・・・


「いや・・・水の音が聞こえたから・・・決して怪しい者では・・・」


「水浴びを想像して、近付かない、という選択肢は有りませんでしたか?まだ目を逸らしもせず・・・揺るがない意思を感じますね・・・遺言は有りますか?」


そりゃ、水の魔法が発動していて、槍構えられてたら、目を逸らせないですよ?!

・・・いや、槍以外の物に目が行ってますけどね。


此処で死ぬ訳にはいかない・・・

仕方が無い・・・


「パラライズ!」


呪文と共に、愛属チャームを発動。

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