第7話 禁忌

「絶対に目を開けちゃ駄目だからな・・・?」


熱っぽい、レミアの声。

レミアに背中を流して貰う、というミラクルが起きている。


・・・ちょっと街でその手の宿を見つけ。

冗談で行ってみたいと言ったら、あれやこれやで。

いつの間にか。


「もう少し強く・・・思いっきりこすって欲しいな」


レミアに注文をつける。


「・・・良いんだな?」


「冗談だ」


声を低め、尋ねるレミアに。

俺が否定する。


レミアが本気で背中をこすったら、俺の貧弱な背中は流血沙汰だ。


「もっと柔らかい方が有り難いかな」


十分加減はしてくれているのだが。

それでもやはり、ちょっと痛い。

我慢できるレベルではあるが。


「・・・もっと、か・・・」


レミアが思案気にそう言うと。


やわ


非常に柔らかい物が背中にあたる。

おお・・・?


「・・・これなら柔らかい・・・だろ?」


「おおお・・・これは・・・」


「絶対に目を開けちゃ駄目だからな」


レミアのその強さは本物。

本当に格好良いし、頼りになるのだが。


こうやって夜になると、時々大胆になる。

一線を越えることは無いし、お預け状態ではあるのだが・・・


そのギャップは非常にどきどきするし。

手を出して、レミアを裏切る事になるのも、流石に気が引ける。

だから、我慢する。


・・・最初に魔法でどうこうしようとした俺が言える事では無いが・・・でも、俺と同じ魔法を異世界転生で手に入れて、凄い上玉を手に入れる最後のチャンスってなったら・・・みんなやるだろ?


「絶対に、絶対に開けちゃだめだからな。駄目だからな」


やわやわ


結局、かなり丁寧に洗って貰った。


--


「危ない!」


レミアが俺を庇って、突き飛ばす。

毒蜂の針嵐。


「レミア・・・癒しの御手よ!」


解毒の魔法を発動。

下級なので瞬間的な完全解毒など望めないが・・・マシにはなる。


「炎の刃よ!」


レミアの放った魔法が、毒蜂を焼失させた。


・・・明らかに俺が足手纏いになっている。

傷口を縛るレミアを見ていて思う。


「ごめん、レミア・・・俺が足手まといになっていて・・・」


「何を言っているのだ、エイコク殿に無理を言っているのは我々。感謝こそすれ、足手まといなどとは」


「でも・・・この先、魔族領に入れば・・・俺を護りながら戦うのは難しいだろう?」


そう。

まだ魔族領に入ってすらいないのに、この体たらく。


ようやく俺の治癒魔法が効果を完了し、変色していたレミアの肌の色が戻っていく。


「うむ・・・それは事実だな」


レミアが認める。


「なら、俺は一旦どこかの街で留まり、レミア1人で行った方が良いんじゃ無いのか?愛属チャームは続いているんだろ?」


レミアは、目を下に向けると、


「ああ、愛属チャームはちゃんと効果を発揮している・・・むしろ、日に日に効果を増しているようだ・・・本当に恐ろしい魔法だな、お前の愛属チャームは」


効果を増しているのか。

夜も少しずつ大胆になってるもんな。

俺としては一線を越えてくれた方が嬉しいんだが。

確定した寝取られの未来とか勘弁して欲しい。


「・・・だから、私がお前に傍にいて欲しいのだ。お前が私から離れた場所にいるとは・・・考えたくない。お前の事が好きで好きで・・・我慢できないのだ」


我慢しなくて良いのに。


「俺も・・・レミアの事が好きだよ。可愛くて、綺麗で、えっちで」


「なっ?!」


「何時も護ってくれて、感謝している。みんなに見捨てられた俺を1人見捨てず、色々教えてくれて」


「な・・・」


ぷしゅう


効果音すら聞こえるくらい、顔を真っ赤にすると、俺の体に顔を埋め。


「やめて・・・下さい・・・今後・・・そういうのは禁止・・・です・・・私が・・・自分を抑えられません・・・」


禁止事項が増えました。

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