第6話 魔獣化

酒場と冒険者ギルドで情報を集めると、近くの洞窟へと向かう。

残念ながら、女性を浚って云々、といった事はしないらしい。

家畜を襲ったり、金品を奪ったり、作物をとったりはするけど。


「炎の刃よ!」


レミアの魔法が発動、ゴブリン達が一瞬で蒸発する。

早い。


「射貫け、氷の矢!」


俺の魔法が発動、崖の上にいた見張りゴブリンを貫く。


「・・・全属性を操れるのは便利だな」


レミアがしみじみと言う。


初級魔術。

回復も補助も、地水火風聖魔も。

初級に限定はされるが、全魔法を操れる・・・素質が有る。

個別に練習の必要が有るのだけど。


レミアの魔法は、王級魔法火。

火における最上級の魔法だ。

・・・大賢者は成長すればそれ以上を覚えるらしいが、それには10年じゃ足りないとか。

王級の魔法で5年程か。

それでも相当な強さだが、魔族と戦うには心許ない。


ザンッ


忍び寄っていたゴブリンをレミアが切り捨てる。


「・・・ゴブリンアサシン・・・ランク2の魔物だぞ・・・これは、キングやロードの存在を疑うべきだな」


レミアが苦々しく言う。

出てから半月のクエストに見えたが・・・報告が遅かったか、もしくは、同一内容で出し直してたか・・・

とんだ罠クエストだ。


「射貫け、風の矢!」


俺が魔法を発動、岩陰に隠れていたゴブリンを貫く。

そもそも報酬も貰えないし・・・我慢に我慢を重ねる日々だなあ。


--


「貴様等・・・何者だ・・・?」


呻くのは、ゴブリンキング。

ランク4、上位冒険者ですら苦戦する相手。

が。


レミアが炎の刃の魔法で此処まで進み。

そして今、ゴブリンキングの攻撃をあっさりと受け止めている。


「訳あって、名乗る訳にはいかないが・・・お前は此処で死ぬ」


「名乗れよ?!」


レミアが言い放った言葉に、ゴブリンキングが叫ぶ。

冥土の土産は無いらしい。


「だが・・・残念だったな・・・私をただのゴブリンキングと思ったのが・・・過ちだ・・・」


ゴブリンキングの体から闇の瘴気が溢れ・・・これは・・・


「これは・・・魔獣化か・・・」


レミアが苦々しく言う。


「魔獣?」


俺が尋ねると、


「その種族存在値を限界まで貯めた者は、更に上位の存在になる事がある・・・魔獣、伝説上の存在と言える・・・まあ、魔王程ではないが、それに準ずる脅威だな」


つまり、魔王幹部よりは強いのかな?


「招来、レーヴァテイン」


ゴウッ


炎を纏った剣が顕われる。


「な・・・?!それは・・・炎の神剣?!何故それが・・・しかも・・・真の力を・・・?!貴様・・・もし──」


ツッコミが長い。

レーヴァテインの一振りが、ゴブリンキング?の命を刈り取った。


ヒュン


もう一振り。

炎が無数に散り、周りにいたゴブリン達の命を一瞬で刈り取る。


「解放」


レーヴァテインが消失する。


「この剣の事を知っているとは・・・ゴブリンキングは、高位魔族に繋がりがある可能性が有ったな」


レミアが思案気に呟いた。


多分、序盤ではあり得ない超展開だったんだろうけど。

味方がそれ以上に強かったです。

まあ、魔王を余裕だと言い放ってますしね。

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