第5話 レベルアップ

俺がうつ伏せて涙を堪えていると、


ぎゅ


背中に何かがあたる。

これは・・・レミア。

温かい。


「すみません、エイコク殿・・・我が儘を申して・・・」


とくとく・・・レミアの早い鼓動が聞こえる。


「・・・うう・・・しばらくこうしていたいです」


レミアが強く抱きついてきた。

・・・いや、気持ちいいけど、生殺し過ぎる。


--


ボウッ


俺の体に吸い込まれた光が・・・立ち上る様に、あふれ出る。

レベルアップ。

鍛錬や魔物討伐で貯まった力が一定量になると、発動。


ステータスの大幅な伸びが生じる他、新しい魔法が増えたり、スキルが増えたり。

そして、既存の能力を強化する事が出来る。


勿論、愛属チャームを・・・


「レベルアップしたな、おめでとう」


レミアがにこにこ、とした顔で言う。


「スキルポイントは、初級魔術に使うように」


笑顔で続ける。

えっ。


「いや・・・しかしだな・・・愛属チャームが強くなれば、レミアのレーヴァテインの強さも・・・」


「私が耐えられん」


レミアが笑顔で告げる。

そうだよ、それが目的だよ。


こうなったら、こっそり愛属チャームを伸ばし・・・


愛属チャームに振ったら、分かるからな?」


ブラフかどうかは分からないが・・・仕方が無い。


「・・・その圧力をかける顔も可愛いし・・・その可愛い顔に免じて、初級魔術にスキルポイントを振るよ」


く・・・


「な・・・っ」


レミアが真っ赤になり、


「いきなり・・・そういうのは・・・ずるいです」


耳まで真っ赤にして、俯く。

そっちの方がずるいよ。


--


「ゴブリンが村に?」


酒場で情報収集。

そこで、冒険者ギルドの塩漬けクエスト──誰もやりたがらず放置されたクエスト──の情報を聞く。


「ゴブリンなら難易度は低そうだな」


俺が言う。

俺でもなんとかなるからな。


「ああ、だからこそ報酬が低く、優先度を下げられるんだろうな・・・だが・・・」


レミアが困った様に続ける。


「放置期間が長いとなると、困った事になる。奴等は、放置すればする程強くなる・・・その割に、報酬の更新がなければ・・・リスクが高い上に、低報酬という、最悪なクエストになってしまう」


ゴブリンかあ・・・

桃色の展開が起きているのだろうか。


・・・ゴブリンとか従えられたら、なかなか理想の生活が出来たんじゃないだろうか。

まあそんなスキルじゃないんだけど。

というか、一般の可愛い子にスキルを使って悪戯したいけど、レミアの監視が意外と厳しいんだよな。

これが嫉妬とかなら可愛いけど・・・多分、騎士として邪術士を放置できない、つまり文字通り監視なんだと思う。


魔王討伐自体には自信が有るようなので、素直に倒すのに協力して、報酬貰うのが良いんだろうな。


「そのクエスト、俺達で解決するか?」


それで御礼に、っていって、若い村娘が俺に惚れて・・・


「うむ・・・あまり目立ちたくは無いが、仕方あるまい。ただ、」


「正式には受けない、だな」


俺はがっくりして言う。

せっかく冒険者ギルドも登録したのに、目立つからという理由で使えていない。

情報を聞くだけ聞いて、依頼を受けずに解決。

これでは御礼の村娘との一夜も望めない。


せめて・・・レミアがぷちエロい目に遭わないかなあ・・・

ゴブリンだし。

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