第3話 不義理

俺は仕方なく、全てを話した。

俺の能力が邪術士であった事。

俺の能力でハーレムを作ろうとしていた事。


うう・・・


「・・・なるほどな・・・」


頭痛を抑えるように、眉根を寄せ、レミアが呻く。


「とりあえず貴様は誤解が有るようだな。相手に恋心を抱かせるのは良いが・・・我々騎士が、相手を恋していたからといって、相手を斬れぬ訳が無かろう?行動を奪う系統の邪術でなくて本当に良かった・・・」


レミアが溜息をつく。


「すみません・・・」


俺はただ平謝りする。


「そもそもだ、私はお前にそれなりに色々気を遣って・・・恩を感じて貰っても良い筈なのに・・・それなのにお前は何を考えているのだ?!」


「返す言葉も有りません・・・」


ですよね。

自分でも悪いとは思っているが・・・魔法でも使わない限り、俺でお近づきになれる存在では無かったからな。


「それにしても・・・これが恋愛、という感情か・・・そうか・・・」


レミアはそう呟くと、


「招来、レーヴァテイン!」


ブンッ


紅く透明な刃の剣が、レミアの手に顕われる。


「レーヴァテインよ、その力を示せ!」


ゴウッ


レミアの手にした剣、レーヴァテインが、炎を纏う。


レミアは、目を細めると、俺を見て、


「エイコクよ・・・すまないが・・・お前を元の世界に帰す訳にはいかなくなった」


そう、感情を抑えた声で告げた。


--


「成る程・・・それは賭けてみる価値が有るな」


厳ついおっさん、国王らしい。

謁見の間。

何故か俺はそこにいた。


レミアは、何時もの戦闘装束ではなく・・・ドレスを着ている。

やはり紅を基調としていて・・・凄く似合っている。

褒めたら、顔を真っ赤にして叩かれた。


事情を聞いたところ・・・


この世界の人は、それなりに自主性が有り・・・

本来なら、異世界召喚には頼りたくは無かったらしい。

六王国それぞれで、神器が伝えられ・・・その内数本の継承者がいれば、魔王を討伐は可能なのだとか。


しかし・・・


神器の力の発揮に必要なものは、人を想う気持ち・・・女性の恋心によって、その真価を発揮する。

ところが、数代前の魔王が遺した呪い・・・人を愛する気持ちを封じる呪い・・・それにより、何代かに一度、人を愛せない女性が産まれるようになった。

そして・・・


今回は、偶然、適齢の候補の女性が全て、その呪いが発現してしまったのだ。

レミアもその1人。

だから、やむを得ず、異世界からの助力にすがった、という事らしい。

・・・レミア、普通に王女様じゃん。


「エイコク殿。御願いします。我が世界を・・・助けて下さい。エイコク殿の魔法が有れば・・・レミアは、レーヴァテインはその力を発揮できます」


普通に賢治達にやらせれば良いんじゃね?


「・・・やれやれ、あの勇者達に任せていては、十何年かかるか、分かったものじゃなかったですからな・・・これで一安心です」


傍に控えていた大臣がぽろっと漏らす。

あれ、意外とあいつら評価低い。


とりあえず・・・此処で断るのは得策ではない。

まずこの城から逃げられない。


「分かりました。微力ながら、この力、この世界の為に使いましょう」


俺はそう言って、頭を下げた。

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