第3話 チュートリアル

「今見てもらったのがこのゲームの、ストーリーの序章だよ」

 正直見入ってしまった、Plにストーリーがついているのは知っていたが、ここまで見入ってしまうほどの物とは思ってもみなかった。

「面白かったよ案内役、正直あんまり期待はしてなかったけど、映像も綺麗だし話も面白そうだったから暇つぶしにストーリーモードもやってみるよ」

「それは良かった、製作者も喜んでいると思うよ」

 案内役もストーリーを褒められて嬉しいのか、声が先ほどよりも元気になっている気がする。

「じゃあこれで、ゲーム始められる?」

 どれだけ話が面白くてもゲームを早くやりたいという欲求には勝てず、急かすように聞いてしまう。

「うん始められるよ、ただ後一つだけやらなきゃいけないことがあるんだ」

 やけに真剣な案内役の言葉に俺も唾を飲み込んでしまう。

「何? そのやらなくちゃいけないことって」

「それはね、君のユーザーネームを教えてほしいんだ」

 ユーザーネームだ? それを教えるくだりをあんな大事そうにするなよな、そう思いながら案内役の声を聴こうと耳を澄ますと、かすかに笑い声が聞こえてくる。

「名前教えるだけで、あんなに緊張して」

 めちゃくちゃ爆笑していた、こいつ教えてもらうことだけ教えてもらったら、絶対にチェンジしてやる。

「ヨゾラだよ」

 強めの口調で名前を教えると、今すぐにでも解雇したいと思わせる返答が返ってきた。

「ヨゾラ? 何が?」

 ふざけんなよと言いそうになるが抑える。

「お前が名前教えろっていうから、教えたんだよ」

「あーなるほど、ヨゾラね、了解それで登録しとく」

 そもそもなんでこいつこんなにも、馴れ馴れしいのか不思議だがゲームを早くやりたいので先に進めてと案内役を急かす。

「これで準備は終わり? 準備が終わりならゲームのやり方を教えてほしいんだけど」

 案内役は未だに少し笑っているような気がするが、そのまま進める。

「うんもうゲーム開始できるよ、まずホームの時と同じ要領で手元をタッチしてみて」

 言われたとおりに自分の手元をタッチすると、network、off-line、training、optionの四つの項目がでてきた。

 俺はこの後どうしたらいいの? という目線をどこにいるかわからない案内役に向けた、するとその目線を感じ取ってくれたのか、案内役が喋りだす。

「次はねtrainingをタッチして、その中からチュートリアルモードを選んでみて」

 trainingをタッチすると、案内役が言っていたチュートリアルモードともう一つ、トレーニングモードという項目がでてきた、ここで案内役が言っていた方とは逆の項目をタッチしたらどうなるのか、気になったが説明だけ聞いてこいつを他の案内役にチェンジするためにとりあえず言いなりになっておく。

 チュートリアルモードをタッチすると、視界が真っ暗になり始めた、数秒後視界が明るくなり始め、周りを見回すが先ほどと景色の違いはないので、さっきの視界が暗くなったのはなんだったか疑問に思っていると、どこからか声が聞こえてくる。

「オッケーそれじゃチュートリアルを開始しようか、と言いたいところなんだけどもう少しだけ聞き忘れていたことがあったよ」

 もうこいつの適当具合にも慣れてきてしまった俺は、一言。

「何?」

 と聞き返す。

「ヨゾラの格闘ゲーム歴とこのゲームでの使用キャラを教えてほしいんだ」

 ごめんなさいの一言もないのかと一瞬頭をよぎったが、無視をしてさっさと質問に答える。

「格闘ゲーム歴はほとんどなくて、使用キャラはシリウスかな」

「初心者の、使用キャラはシリウスね了解、じゃあなるべく難しいことは言わないでチュートリアルをするからね」 これだけしっかりできるのだから、あとはあの適当具合を直せばもっといい奴になれると思うんだけどなー、こんなことを考えているのを案内役は全く察してもいないのだろう、そのま

 ま話を進めていく。

「じゃあチュートリアルを始めるからよく聞いといてね」

 こいつに上から教えられるのもなんだか癪に感じてきたが、我慢をしてそのまま話を聞き続ける。

「案内役のチュートリアルその一、キャラクターになってみよう」

 案内役は張りのある声で説明をし始める。

「あたりまえだけど、従来の格闘ゲームはモニターの中にいるキャラクターを、コントローラーで操作するっていうゲームだったでしょ? それがこのゲームでは自分自身がキャラクターになって戦うんだ」

 今の言っていたこと全部公式のサイトをに載っていたものの気がしたが無視をして、案内役の説明を聞く。

「それじゃあ今すぐシリウスになってみよう」

 突然だなと思いながら、あとちょっとでシリウスになれるという気持ちが自分を急かす。

「それでどうやったらなれるのまたメニューから選ぶ感じ?」

「次はメニューからじゃないよ、ただ念じればいいよ、使用キャラシリウスってね」

 なんだそんあ簡単なのか言われたとおりに念じてみる、「使用キャラシリウス」、すると自分の足元からだんだんと光に包まれていく。

 数秒後、体を包んでいた光がだんだんと消滅していく、光が完全に消滅しきったタイミングで、俺の目線がいつもより高いということに気が付いた。

 これはもうシリウスになれているのかと、急いで自分で見える範囲の自分の姿を見回した、服装は黒色の和服で、足には下駄を履き、髪型は触ってみた感じ少しだけ逆立っているような髪型だ、これはシリウスの特徴に一致するというかシリウス本人だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Planetarium tada @MOKU0529

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ