第4話 一声(3)


 二限になり、マミが試験の出番になった。鳥の羽を出しておいて、そこから召喚の準備を始めた。まずは契約内容だ。


(一、 短い時間でいい。

二、戦闘能力はいらない。

三、私の意志に従って。

四、健康な状態で現れて)


「いきます!現れて!」


 鳥をイメージすると、手から光が現れ、手の中の鳥の羽は消えていった。光はだんだんと大きくなっていき、マミの周りの風景が変わっていった。

 聖晶世界にイメージを飛ばしているので、マミが見ている風景は聖晶世界の一部だ。

 ほとんどの部分に白い靄のようなものが覆っており、小さな木だけ靄が覆っておらず、そこに目的の鳥がいた。

 まるでその鳥を呼ぶように、マミは光の下へと導いた。小鳥は光を発するマミの手へと飛び移ってきた。その光が消える頃には周りの風景は元に戻り、小さな茶色い鳥がコルニキアに現れていた。

 成功だ。


「よろしいでしょう。下がってください」


「はい」


 開始と言われてからそこまで時間をかけずに召喚することができた。

 時間も評価対象であり、時間がかかりすぎると才能がないとされる。一番時間がかかる工程は聖晶世界とコルニキアを繋げることだ。

 これは召喚する存在によって異なる。することは聖晶世界へイメージを飛ばすことであり、イメージの的確化だ。

 召喚した小鳥はマミの指に留まり、しばらくした後光を発して消えた。聖晶世界へ戻っていったのだ。これは契約の時間が過ぎたからだ。

 周りを見てみると、失敗している生徒もいた。そこまでランクの高い存在は召喚していないようなので、先生たちだけで何とか抑えることができている。

 契約物が異なったり、簡素な物だと暴走しやすいのだが、契約内容が足りないだけなら、そこまで暴走しない。または光が消えても何も現れないかのどちらかだ。

 ヒュイカはハーピーの召喚に成功したようで、クレアも時間がかかったようだがウィンドフェアリーの召喚に成功していた。成功した際には周りから歓声が起こっていた。最上級生だって召喚できない人は召喚できないのだ。

 召喚は最終的に才能なのだ。

 努力で埋められる才能と、埋められない才能は必ずある。努力して全員が召喚士になれるわけではないし、研究者になれるわけでもない。

一番端的な例が、誰でもコロシアムの覇者になれるわけではない。生き物に寿命がある限り、これは絶対的なルールだ。


「クレア、本当に成功させるとは思わなかったよ」


「それ、先生にも言われた。上級学校コンクールの校内代表に選ばれるかもだって」


「コンクール!すごいじゃない!」


 コンクールはコロシアムとは異なり、召喚して戦うのが目的ではなく、観賞用の召喚をするのが目的だ。綺麗な物、珍しい物を召喚して審査してもらう。戦う必要がなく、また召喚士になるためには経験しておきたい舞台である。

 コンクールで入賞したりしていると、審査書に書かれるので、召喚士の採用試験の際に有利になる。

 また、学生の大会でも入賞すると賞金が出る。それほどコルニキアでは召喚に関心があるのだ。

 余談だが、コロシアムにも学生用の大会があり、そちらも賞金が出る。コンクールよりも賞金の金額は大きい。


「かも、だから」


「でも見た感じ、中級の召喚してる人他にいないよ?たぶんいけるって!」


「そうしたら、クレアの敵は筆記かな?」


「そう!ということでマミ先生、勉強教えて?」


 クレアはおちゃらけたように手を合わせてマミに頭を下げてきた。片目だけつぶり、舌を出している状態だ。全然可愛くない。マミは呆れながら承諾の意味で頷いた。


「はいはい。でもクレアだって成績悪いわけじゃないでしょ?」


「あんたに比べたら悪いさ」


「この学校に入ってるんだから、それなりの学力はあるでしょ?ま、教えるけど」


「助かります」


 三日後の筆記試験のために、三人は勉強会をすることになった。全員寮生活なので、時間などは気にしなくていい。


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