第182話この意なんの意5
「じゃね」
アリスが、手を振った。
「またウィータを誘う口実、見つけて会いに来る!」
そりゃ物騒なことで。
「そろそろ夕餉ですね」
時間も、いい頃合い。
オドからログアウトする。
二重統合人格。
少し脳が揺れた。
一種の自分酔いか?
「雉ちゃん」
「はいアシストオフ」
すり抜け量子だった。
場所は、我が家のリビング。
立体映像は、アシスト無しに、現実に適用されない。
「何か用?」
「愛してる!」
「さよなら~」
「投射器オフにしないで~!」
「じゃあ馬鹿なことはやめてね?」
「馬鹿じゃないもん……」
その反応は可愛い。
口にはしてやらないけど。
「既に恋人いるから」
「なんでよー!」
「ロマンスの神様に聞いてください」
「私と付き合った方が得だ……って」
「神託の誤宣は宗教裁判モノだよ?」
「神は心に宿るのよ?」
人工知能が神を崇拝するな、との意見だけど。
クオリアを持てば、話は別か。
「厄介なモノを作ったなぁ」
「ひど!」
量子が、ピーと泣く。
「あう」
秋子まで、げんなりした。
「春雉。め!」
一本指立てて、責める夏美だった。
「夏美以外に興味ないし」
「ちゃんと秋子ちゃんと量子ちゃんに向き合って」
「えー」
「何でイヤそうなの?」
「女性として見られないというか」
「ひど!」
「ひどっ」
またもや幼馴染みが、ピーと泣く。
「ほら、秋子ちゃんはおっぱい大きいし……」
夏美が秋子を……どう捉えているか?
よくわかる御言の葉だった。
「量子ちゃんは国民的アイドルだよ」
だから付き合えないだろ。
よっぽど言ってやりたかったけど、
「そんな優しい夏美がしゅき!」
ギュッと抱きしめる。
「あうあうあ~」
愛に流され溺れてしまえ。
「可愛いなぁ可愛いなぁ」
頬をスリスリ。
「助けてー!」
ムホホホ!
「雉ちゃん!」
「雉ちゃん!」
「はい。何でしょう?」
「エッチはダメ」
「まぁね」
それくらいわかってる。
夏美を抱くのは、まだ後だ。
「セクハラもダメ!」
「電子法には抵触しておりませなんだ」
「夏美ちゃんが困ってる」
「そうなの」
「あう……」
赤面。
紅潮。
そして、プシューと、脳天から湯気を立ちのぼらせていた。
「可愛い」
鯖折り気味に、抱きしめる。
「タップ、タップ」
パンパンと、背中を叩かれる。
「うーん、デリシャス」
そして解放する。
「で、何の話だったっけ?」
「だから秋子ちゃんと量子ちゃんを……」
「あー! あー! あー! 夏美ー! 愛してる! おまえに夢中だー! 夏美ー!」
「そういえばそのネタも私が教えたね」
然りでござんす。
「いいんだけどさ」
拗ねるような。
照れるような。
焦るようで、諦めるような。
そんな祝福。
「でも幼馴染みが可哀想って言うか」
「主にキミのせいでね?」
「あぐ……」
夏美が愛らしいのも責任問題。
「量子も夕餉食べる?」
「これからまた仕事」
国民的アイドルも大変だ。
検挙じたいは、並行しているのだろうけども。
「預言してあげましょうか」
「カモン」
「夏美ちゃんと一緒にお風呂入るでしょ?」
正解。
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