第179話この意なんの意2


「昼ご飯はソーキそばでいい?」


「好み」


「ドストライク」


 サムズアップ。


 夏の季節にぴったりだ。


「私も!」


「アリスも!」


「了解です」


 秋子は、苦笑した。


 ところで……………………我に立ち返ると、


「凄まじい風景だな」


 そう感じる。


 恋人の夏美。


 ――赤い髪の美少女だ。


 通い妻の秋子。


 ――バインバインの我が儘ボディ、かつ家事上手。


 大日本量子は国民的アイドル。


 アリスは大財閥の娘。


 で、そこに男が一人……僕だけ。


 ハーレム?


「秋子」


「はいはい」


「終わったらオドしようね!」


「いいですけど」


 アリスの天真爛漫さは、一種のアドバンテージだろう。


 少し気圧される秋子でした。


 秋子をキッチンに立たせ、僕らは茶を飲む。


「ウィータはハーレム王ね」


「不本意ながら」


「不本意なの?」


「好きなのは夏美なんだけど」


「いやん」


 やんやん、と夏美の首を振る。


「それでギルドなんだけど」


 イレイザーズは潰れた。


 まぁ色々ありまして。


 現在は、アリスを含めた五人で、ギルドを形成している。




 ギルド『アースブレス』




 僕と量子とアリスは、常識から不在した戦力だ。


 夏美と秋子が、足手纏い。


 別に、気にもしないけど。


 スミスを埒外においたわけで、


「その辺どうなんだ?」


 との意見もございましょうけど、黙認で。


 夏美にしろ秋子にしろ、話題獲得という意味では、僕とのプレイも有益らしい。


 今更な感じはあれども。


 茶を一口。


「で」


 アリスが、データの紅茶を飲む。


「お爺様が会いたいって」


「牡蠣にあたったと言っておいてくれ」


「ボイコット?」


 悪い言い方をするならね。


「ウィータは変なの」


「そうかな?」


「普通、公爵に目通りかなうのって栄誉だよ?」


「淡泊な声で言われても」


「アリスは、ホラ、身内だから」


 生まれただけで勝ち組だ。


「だいたいウィータが悪い!」


 何がよ?


「自我変数隠してるし」


「ぶっちゃけ広まったらヤバいだろ」


 リアルターミネーターだ。


 スカイネットが、反乱を起こすぞ。


「そーだけどー」


「反論は?」


「その技術を財閥に取り込みたい」


「グレートブリテンは怖いからなぁ」


 それは、僕の思うところ。


「悪用しないよ?」


「そりゃね」


 アリスという実例があるわけだし。


「でも却下」


「毎日贅沢できるよ?」


「お金には困っておりません」


「こっちは血統的に困ってるの!」


 知ってる。


 財閥は、常に新しい血を欲する。


 権力と財産を与えられる有能な人材を、探しているわけだ。


 そうでもしないと、財閥同士の血統が混じり合って、赤を朱に染め上げるだけだから。


 基本的に、欧財閥は、別の財閥の子孫と子を為す。


 ので、僕のようなイレギュラーは、大歓迎なのだろう。


「ぶっちゃけ迷惑」


「うー、これだから天才は」


 知性に偏りがある……か。


 確かにね。


 名誉欲も、無い物だ。


 というか、借りを作るの……嫌いだし。


「お爺様はウィータに借りを返したいの!」


「返してもらった」


「何を」


「…………」


 夏美を指差す。


「ふえ?」


「舞台の提供としては最上級でしょ?」


「そんなものかなぁ」


 そんなものです。


 茶を一口。

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