第178話この意なんの意1


「それで量子ちゃんが」


「そゆこと」


 回想終わって、高校の夏休み。


 僕の家に遊びに来た夏美が、納得する。


「雉ちゅわーん!」


 抱きつこうとする量子を、僕はアシストで留めていた。


「浮気者!」


「ですなた」


 投射器の機能を、オフにする。


 パッ、と、量子が消えた。


「何でよ!」


「邪魔」


 他に言い様もない。


「えへへ」


 夏美は、照れ照れと笑う。


 超可愛い。


 胸は、残念だけど。


「春雉」


「何でござんしょ?」


「夏です」


「ですね」


「夏は人を浮つかせます」


「戦地では被害大だね」


「そういうわけで戦いましょう」


「?」


「ベッドで一勝負」


「却下」


 夏美は善良だと……思っていたのだけど。


 まさか秋子と量子の影響じゃあるまいな。


「理由は?」


「量子に検挙される」


「合意の上でならいいのでは?」


「校則違反」


「ストイックですのね」


「イギリス紳士なので」


 サラリ、と、下流に流す。


「公爵の影響?」


「それは違うかな」


 あまり強くは否定できないけど。


「なんなら行ってみる?」


「いえ、さすがにソレは」


 夏美をして、気圧させる……か。


「じゃあコッチが会いに来る!」


 唐突に、アリスが現われた。


 あれ?


 投射器はオフにしたんだけど。


「にゃー!」


 量子も復活。


「ハロー」


 アリスが、手を振る。


「ウィータ。それとラバーの夏美」


「照れる」


「照れますね」


「あんなロマンチックな告白したら誰だって堕ちるよ」


「そですか?」


 首を傾げる夏美だった。


 実際、堕ちたわけだし。


 夏美…………可愛いもんね。


「ぬぐぐ」


 量子は、不満いっぱいらしい。


「で、アリスは何用?」


「定期的に会わないと、ウィータに忘れられそうで」


 それはない。


 アリスくらい強烈な背景は、然程見ない。


 国内世論だけで語るなら、量子が対抗馬か。


「そんなわけでオドしよう?」


「オドね」


「オドですか」


「オド……」


 三者三様。


「じゃあ秋子も呼ばないと」


 そう相成る。


「呼ぶ?」


「というか呼ばなくても来る」


「何で?」


「…………」


「ラバー?」


「違い申す」


「じゃあ何よ?」


「昼餉を作りに」


「イッツジャパニーズ通い妻ね」


「アリスは変な知識を取り込みすぎ」


「知識吸収にハマっちゃって」


 まぁ自然の帰結だろう。


 実際に、僕や量子も、似たような物だ。


 イレギュラーとして、量子には、肉体限界が無いわけだけど。


「じゃ、秋子のご飯を食べてから」


「だね」


 ピンポーン。


「どぞ」


 ぽつりと零す。


 解錠して、秋子が入ってきた。


「はあ、涼しい」


 夏だからね。


 空調全開。


 夏休みは、良いものだ。


「あ、量子ちゃんも」


「もうすぐ次の仕事があるんだけど」


「頑張ってね」


「うん。頑張って雉ちゃんと子ども作る」


「データ妊娠って組めるかな?」


 少し試算する。


「アウト」


 ぷっくり可愛らしく膨れた夏美が、僕の頬を引っ張った。

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