第168話データイーター3


「射!」


 ブレードを振るう。


 ボスキャラが、ポリゴンの破片になって、砕け散る。


「ふい」


 安穏とする。


 涼子……シリョーも似たような物だ。


 肉体のくびきから解き放たれて数日。


 僕と涼子はオドで遊び倒していた。


 実際に勉強は何時でも出来るので、あまり意味がない。


 独立したAIが彷徨うのも珍しくはない。


 しばらく遊んでいると、


「二人は何時も一緒ね」


 声を掛けてくるプレイヤーがいた。


 金髪蒼眼のアバターだ。


 外見年齢は幼い。


 多分、中身はおっさんだろうけど。


「オドじゃ珍しいことじゃないでしょ?」


 サラリと述べる。


「珍しいよ」


 幼女は、ケラケラと笑う。


「既に死んでいる人間のコピーAIがキャラ動かすなんて」




「……………………」

「……………………」




 警戒が、最大値まで引き上がる。


「どこで、ソレを?」


「ちょっとした情報網でね」


「…………」


「雉ちゃん……」


 涼子も不安そうだ。


「何か迷惑でも?」


「ううん。別に?」


 朗らかな言葉だった。


「ただちょっとね」


「…………」


「とりあえずオドで遊びましょ?」


「グル組めと?」


「そ。結構強いよ?」


 いいんだけどさ。


 そしてオドプレイ。


 幼女は名をアリスと名乗った。


 たしかにソレっぽい名前だ。


 というかロリっぽい。


「あはは!」


 キャッキャ、と、はしゃぐアリス。


 雑魚を鏖殺していく。


 ここだけ切り抜くと、


「ああ、教育に悪い」


 とは思う。


 僕と涼子も参加した。


 しばらく遊んで、安全エリア。


 喫茶をする。


「…………」


 アイスココアを飲む。


 うむ。


 美味い。


「紅茶も美味しいよ?」


 さいでっか。


「で、アリスは何の用?」


「んーと」


 紅茶をズズズ。


「ちょっとね」


 言いにくいことなのだろうか。


「まず」


 とは、アリス。


「どうやってAIがキャラ動かしてるの?」


「なんか普通に」


「…………」


 半眼で睨まれた。


「然程のことはしておりませんが?」


 大嘘をぶっこく。


「じゃあハイドのこと世界にバラしてもいい?」


「勘弁してください」


 弱いなぁ僕。


「そんなわけで」


「どんなわけで」


「付き合って?」


「シリョーがいるから無理」


「雉ちゃん……」


 恋する乙女の顔。


 ネットリテラシーは守るように。


「ラブラブだね」


「自慢できる程度には」


 サラリと受け流す。


「中々ね」


 アリスの苦笑。


「でもこの場合は」


 と指を振る。


「アリスの家に付き合って……って意味」


「いいのか?」


「別に今更だしね」


 アリスは、うんうんと頷く。


「じゃ、宜しく」


 そしてアリスはログアウトした。


 アドレスを残して。


「どうするの?」


 どうしましょう?


「別に罠でもないだろうけど」


 それにしても。


 といったところ。

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