第169話データイーター4


 オドをログアウト。


 僕と涼子は、アドレスに飛んだ。


 投影された映像で、アリスの自宅の門前に立つ。


「でか……」


「大っきい……」


 それが、僕たちの第一印象だった。


 豪邸……どころの話ではない。


 辺り一面花畑で、まず家が見えない。


 丁寧に手入れされている花畑を見るだけで、


「幾ら掛かっているのか?」


 そんな金の計算をしてしまうほど。


「春雉様に涼子様でいらっしゃいますでしょうか?」


 使用人が立っていた。


「はあ」


「へえ」


 炭酸の抜けた声を出す、僕と涼子。


「よろしゅうございました。どうぞこちらへ」


「…………」


「…………」


 プレジデントが用意されていた。


「ほう」


「もう」


 よくわからない感慨。


 どうやらアリスは、お金持ちのようだ。


「立体映像なんですけど」


 それは確かだ。


 アーティフィシャルインテリジェンス。


 現実世界に還元する際は、立体映像の形を取る。


「大丈夫です」


 何がよ?


「車内にも投影機は付けられていますので」


「ですか」


 そりゃ重畳。


「こちらはアリスお嬢様のお気に入りの花畑でして」


 使用人が車内の中……移りゆく庭を説明してくれる。


 車に揺られてしばし。


 豪邸に辿り着いた。


 豪邸……。


 城と呼んだ方が適切か。


 見た目完全に宮殿だ。


 そこのシステムに侵入して、映像となる。


「こちらへ」


 使用人が案内してくれる。


 応接室。


 ……と呼んで良いものか。


 外見が外見なら、内装も内装だった。


 超高級と一目でわかる調度品。


 安楽椅子に鎮座する老齢の男性は、こちらを見るとパッと表情を華やがせた。


 公爵。


 そう呼んで欲しい、との勧めだ。


「お招き預かり光栄です。公爵閣下」


「えと……どうも」


 涼子も緊張しているらしい。


「こちらこそ呼び立ててすまなかったね」


 大らかな人の様子。


「アリスに呼ばれたのですけど」


「ああ、私の宝だ」


 ――お孫さん。


 とのこと。


 紅茶が振る舞われる。


 僕と涼子はデータで。


 スッと飲む。


「美味い……」


「だよ……」


 率直な感想が出た。


「それなら良かった」


 ホッと安心する公爵。


 どうやら本当に人が良いようだ。


「ミスター春雉」


「なんでしょうか?」


「ミスターは死にかけているらしいね?」


「みたいですね」


 僕には関係ない話。


 少なくとも此処にいるのは、


「独立した存在」


 であるから。


「面白い」


 何がでしょ?


「さすがはミスターだね」


 何を褒められているのやら。


「そんなミスターにお願いがある」


「何でっしゃろ?」


 あまり良い予感はしないね。


「孫を」


 アリスを?


「救ってほしい」


「?」


 ちょっと意味が分からない。


 ちなみに僕は医者じゃない。


 病気を治せる手段も無い。


 あるならとっくに自分に仕掛けている。


 怪我。


 障害。


 環境。


 どれもパッとは思いつかなかった。


「どうしろと?」


 少し考える。


「ミスターに頼むしかないのだ」


「あの……頭をあげてください」


 罪悪感が半端ない。


 やれと言われりゃ、やりますけど。


 何が出来るでしょ?

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