量子origin

第148話量子と涼子1


「チェインボム!」


 コキアが、魔法を唱える。


 同時に、各所で、爆発が起こる。


 チェインの名の通り、連鎖的に爆発が起こり、敵を滅ぼしていく。


「物騒極まりない」


 と言えば、その通りなんだけど、ゲームです。


 オーバードライブオンライン。


 略称オド。


 僕は、ぼんやりと見ていた。


 場所は妖精郷。


 そのファーストエリア。


 今のミツナとコキアなら、十二分に対応できるレベルだ。


 妖精に悪さをする(という設定の)悪魔と戦う場所。


 一応、無双ゲーなので、雑魚は限りなく弱い。


 適切な判断は、そりゃ必要になるんだけど、


「まぁ駄目だったらフォローに入れば良い」


 と僕は楽観していた。


 ミツナとコキアとスミスが、一生懸命敵を倒している。


 特にスミスは、コキアのフォロー全開だ。


 さもありなん。


 涙無くして語れないストーリー。


 別段スミスを慮っているわけでもないけど。


 僕とシリョーは、こっちに向かってくる敵だけを、屠っていた。


 双方共に、ミラクルレアのアイテム所持者だ。


 ネトオクに出せば、ドルで億行く非売品。


 無論、譲る気はサラサラないけどね。


「きーじちゃん」


「なーぁに?」


「明日からお盆だね?」


「だね」


「何するの?」


 わかってて聞いてるでしょ?


「量子のコンサート」


「あは」


 ほころぶように笑うシリョー。


 どうやら、僕から、その一言が欲しかっただけらしい。


「後は墓参りだね」


「そんな義理立てなくても良いよ?」


「そうも行かないさ」


 あははと笑う。


「夏美ちゃんにも来て欲しいんだけど……」


「コミケ行くって云うんだから、しょうがないんじゃない?」


 サブカルオタクの戦場で、夏美はその一兵士。


 今も、銃を片手に戦ってるけど、ミツナと夏美の戦闘の質は、違うベクトルを向いている。


 それについて、どうこうってわけでも……ないけど。


 今の時代、サブカルも、ネットの海に沈没する傾向があるけど、どうやら科学が進めど、同人誌というものは不滅らしい。


「質量として存在することに意味がある」


 とは夏美の言。


 VRオタクには、難易度が高い。


 ネットの世界に、半身突っ込んでいるもんで、基本的に形相さえあれば大丈夫という人間である……僕は。


 まぁ人それぞれと云うことで。


 それに、コミケは、セカンドアースでも為されてるしね。


 行こうと思えば、幾らでも行ける。


 現実とネットの両方で展開されており、ガチオタが現実を尊重していると云うこと。


 いらん知識でした。


「…………」


 湧いて出る悪魔たちを、フォトンブレードで薙ぎ払う。


 シリョーも、プスプス槍を刺している。


「なんだかねぇ」


 マイスイートハニーと、少し溝が出来た気分。


 飛び越えられる程度の溝だから、そこまで深刻でもないんだけど。


「ソニックバレット」


 ミツナが、銃弾を放つ。


 その周囲にソニックブーム……衝撃波が発生して、わらわら湧いて出る雑魚キャラを、まとめて吹っ飛ばす。


 しばらくエリアを進むと、ボスが出てきた。


 まぁ健闘を期待するや切である。


「しっかしまぁ」


 十八禁本を買えるのだろうか?


 そしてそれを、おかずにするのだろうか。


 はっ!


 間接的な浮気?


「……虚しい」


 というより罪深い。


 そんなことを言い出せば、そもそも秋子と量子を突き放さず、だらだら親交を深めてる僕の方が、問題だ。


 夏美は、


「それでいい」


 というけど……でも……ねぇ?


 どうにもこうにも、自分で、後ろ髪を引っぱってる思い。


「きゃ」


 と、ミツナが、悲鳴を上げた。


 しょうがない。


「フォトンブレード」


 刀身を伸ばして、ミツナに襲いかかった、大悪魔の爪を弾く。


「あ、ありがと」


 こっちを見て苦笑。


 いえいえ。


 お役に立てて幸いです。


 そんな感じ。

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