第132話ソレナンテエロゲ?3


「というわけで」


 お泊りセットを各所に置いて、我が家を制圧した、夏美と秋子。


 量子は、昼時のエンタメ番組(生放送)に出ているため、ここにはいない。


 昼食時も過ぎている頃合いだから、そろそろ戻ってくるだろうけど。


 で、秋子が言った。


「デートしよ? 雉ちゃん」


「ええー」


「何で嫌そうなの」


「だって恋人居るし」


 ポン、と、隣に立っている、夏美の頭に手を乗せる。


「あう」


 と茹だる夏美。


「じゃあ二股デート」


「僕はいいけど夏美は?」


「大丈夫です」


「そうなの?」


「はい」


 それはそれで……寂しいんだけど。


 ま、夏美は、誰にでも優しいから、こんなものか。


 独占欲を軽やかに躱すというか。


 秋子や量子に負い目を持つというか。


 もっと我が儘になってくれてもいいんだけど。


 それは追々と云うことで。


「でもデートは良いけど外に出たくない」


 インドア派の宿業だ。


「じゃあ電子デートということで」


 あっさりと、妥協なされた。


 とりあえず、デート自体は、却下できないらしい。


「それなら……まぁ……」


 いいのかな?


 別にランドアークシステムを使えば、クーラー効いたまま移動できるんだけど、基本的に僕が赴くのは、学校か超過疾走症候群オーバードライブシンドロームの処方でトレーニングジムくらいだ。


「デートでなら百貨繚乱辺りも行くけど、真夏の最中に、人のいっぱい居る場所に行かなくとも……」


 なんて思うわけ。


「で……」


 仕切り直し。


「どこに行くの?」


「沖縄!」


 快活に秋子。


「この炎天下に?」


「電子デートですから、何処に行ってもいいんじゃない?」


「沖縄ねぇ……」


 夏季休暇でもあるし、金使ってモノホンの沖縄に行ってもいいんだけど。


 色々と手続きが面倒臭い。


 その分、電子デートなら、たしかに快適に過ごせるだろうけど。


「美ら海水族館とか行こうよ」


「有名処は人が集まるよ……」


 それがネックだ。


「無人島で泳ぎましょうよ」


 多分、何処も、人がいると思うけど。


「イリオモテヤマネコを捕まえましょう」


「電子犯罪だよ」


 量子に検挙されたいの?


「むぅ」


 難しい顔をする秋子だった。


 まぁ代案も出さず却下されれば、僕だって唇を尖らせるだろう。


「夏美は?」


「ふえ?」


「どこか行きたいところある?」


「何処でもいいんですか?」


「電子犯罪に抵触しない場所ならね」


「秋葉原」


 そう云えば君、サブカルオタクだったね。


 VRオタクの僕が、他人の事は言えないけど。


「オタクショップとか巡りたい」


 あははと笑う夏美。


「賛成一」


 と僕。


「私が却下しても二対一で可決されるよね?」


「いいじゃん別に。秋葉原なら夏美のフィールドワークだし」


「いえ。秋子ちゃんがダメなら諦めます」


「「可愛い!」」


 僕と秋子が、夏美を抱きしめた。


「ふえ……っ」


 タジタジの夏美。


 僕に頭部を包まれて。


 秋子にきょぬ~を押し付けられて。


「ふえ……ふえ……」


 先述したように、タジタジ。


「じゃあ秋葉原と云うことで」


「うん。構わないよ」


「いいんですか?」


 いいんです。


「じゃ、とりあえず火気と施錠とエアコンの確認をせねばね」


 電子デートなのだから、意識だけ向こうにやられることになる。


 戸締りの確認はせなばならないし、火事になったら死ぬしかないし、屋内気温が高まれば、向こうはどうあれ、現実世界で熱中症になってしまう。


 こんなときこそ、秋子百人力。


 完璧に、仕事をこなしてのけた。


「じゃ、とりあえず集合場所のアドレスを送ってくれない?」


 僕が夏美に聞くと、


「では」


 と、ブレインユビキタスネットワークを通じて、アドレスが送られてくる。


 で、寝室のベッドに寝転んで、リンクスタート。


 フルダイブの没入感に、身を任せた。

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