第131話ソレナンテエロゲ?2


 そんなわけで、朝食と相成る。


「いただきます」


 と一拍。


 僕と秋子と夏美とで、朝食を開始する。


 今日は、麦ごはんと冷奴と味噌汁。


 リビングでは、量子が、立体映像でゲームをしている。


 こいつも何だかな。


「で」


 とこれは秋子。


「許可が欲しいんです」


「何の?」


「私と夏美ちゃんの移住について」


「引っ越すの? ていうか何で僕の許可が?」


「夏季休暇中は、雉ちゃんの家に入り浸りたいです」


「ブッ……」


 朝食を嚥下しておいてよかった。


 まさか噴き出すことになろうとは。


「具体的には?」


「夏季休暇中泊めてください」


「何で?」


「押せ押せで攻めることにしました」


「夏美に許可は取ってあるの?」


「私も夏季休暇中だけでいいので春雉の家に泊まりたいです」


 そういうカラクリですか。


「雉ちゃんにアプローチする権利は言質取ってます故」


「夏美は良いけど秋子とはな~」


「でも夏美は家事能力が十分ではありませんよ?」


「…………」


 それはそうだけどさ。


「夏季休暇中だけですから」


 とは言われても。


「なんのエロゲ?」


 量子。


 茶々いれない。


 責めるように視線をやるけど、飄々としたものだ。


「だって夏のアバンチュール全開な展開でしょ?」


 否定はしないけどね。


「私からもお願いします」


 夏美が、丁寧に言ってきた。


「親の許可は?」


「取ってきました」


「根回しが良いね」


「いえ。先に秋子ちゃんに提案されたので、準備期間があったというだけですけど」


 それでも、男との同棲を許す辺り、寛大な処置と言えるだろう。


「秋子はそれでいいの?」


「夏美ちゃんとは友達ですし抜け駆けはこの際悪徳かと」


 やもめ暮らしに押しかけてくるのは、悪徳じゃないと抜かすか。


「いいじゃない。ね?」


「親の認可を得てるなら、僕から言うことは無いけどさ」


 そんなわけでそんなことになった。


「じゃあ私も!」


 これは量子。


 もう好きにしてくれ。


「ではその様に」


 量子変換でお泊りセットを具現する夏美と秋子。


 朝食をとり終えた後である。


「部屋は両親のところを使ってね」


「はい」


「わかってる」


「私の寝床は!?」


 最後のは量子。


「眠りたいの? ここで?」


「雉ちゃんと同じベッドで!」


「無理でしょ」


 さっくり介錯。


 少なくとも、物理干渉が出来る立体映像の技術は、まだ発明されていない。


 布団をすり抜けるのが、量子の宿命だ。


「じゃあ電子世界で一緒に寝よ?」


「い・や・だ」


「もう。雉ちゃんの照れ屋さん」


 本音だ。


 紛うこと無き。


「何でもしてあげるよ?」


「別にいいかなぁ……」


「何よぅ。その反応……」


「恵まれた悩み?」


「恵まれすぎな気もしますけど……」


「ごめんなさい」


 夏美さん。


「でもだからこそ春雉らしいですけどね」


 くっくと、夏美は笑った。


 この子も、こういう笑い方が出来るのか。


「でも実際に僕を好きでいてくれるの?」


「ぞっこんですよ?」


「チョロいね」


「乙女なんてそんなものですよ。格好良い男の子に優しくされたらコロッといってしょうがないんです」


 さいでっか。


 実際に、総一郎に優しくされて、コロッていったもんね。


 僕がぶち壊したんだけど。


「恨んだりしないの?」


「それについては先述しましたけど?」


「そうだったね」


 苦笑。


 後に背伸び。


「ま、これからよろしく」


 ポンと、夏美の頭に、手を乗せると、


「はい。お願いします」


 夏美は、トロンと目を砕いて、幸せそうに微笑んだ。


 この子の笑顔は…………胸を突くなぁ。

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