第118話乙女心は麦の様で1


 それは、とある夏の日の、出来事。


「雉ちゃん!」


「嫌」




 ――次回をお楽しみに――





















「勝手に終わらせないでよ!」


 だってさぁ……。


 ブラックセミロングツインテールの女の子……国家アイドルこと大日本量子ちゃんは、絶賛、我が家で昼食中。


 それは、僕もそうだし、秋子もそうなんだけど。


 ちなみに、今日の昼食は、握り寿司。


 節税対策の一環だ。


「き~じ~ちゃん~」


「……………………なに?」


「今日の夜ね」


 夜ね。


「夏祭り行こ?」


「どっち?」


「セカンドアース!」


「そっちなら……まぁいいか」


「何か不都合が?」


 まぁ色々と。


「私も行く!」


「ほら。賛成二票」


 なにが「ほら」か。


「量子のスケジュールは大丈夫なの?」


「今日のために調整した!」


 そう言われると、断りにくいなぁ。


「雉ちゃん」


 こっちは秋子。


「一緒に行こ?」


「花火もあるよ?」


 ロマンチックだね。


「というわけでけって~い」


 まだ、うんともすんとも言ってないんだけど。


 乙女フィルターは無敵だ。


 そんなことは、百も承知なんだけど。


 ウニを頬張る。


 湯呑で茶を飲む。


 うむ。


 美味い。


「今日一日は暇だから」


「だから何よ?」


「浴衣選ぼ?」


「僕の意見なんているの?」


「それは……まぁ……」


 照れ照れ。


 可愛い可愛い。


「私も! 私の浴衣も見繕って!」


 秋子も、強硬に主張する。


 やれやれ。


「僕の意見でいいのなら」


「やた」


「やった」


 秋子と量子が、ハイタッチ。


 僕はヒラメを放る。


 中略。


 夏美にメッセージを送った後、僕と秋子は、別室で寝転んで、電子世界に。


 量子は、元より電子世界の住人だ。


「ログイン」


「ログアウト」


 という概念が存在しない。


 ある意味逆転的で、


「現実世界にログイン」


「現実世界からログアウト」


 と言えるかもしれない。


 で、そんなことはともあれ。


 僕と秋子と量子は、和服専門店に顔を出した。


 ここを利用するのも、初めてではない。


 言ってしまえば、しがらみなんだけど、マイナス要素は無い。


 単に、利用しているし、店員さんとも顔馴染みってだけだ。


 それから、より取り見取りの浴衣を前に、キャッキャと、秋子と量子は、はしゃいだ。


 ここはセカンドアース。


 電子世界であるため、試着も一瞬だ。


 まるでコマ落としのように、パッパッと映像が切り替わる。


 この場合は、秋子と量子の浴衣姿のこと。


 と、


「お待たせしました」


 信濃夏美さん登場。


 僕の恋人だ。


 まだ秋子と量子には言ってないけど。


「おや、夏美ちゃん」


「どうしたの?」


 聞く?


 そういうことを普通。


「もしかして雉ちゃん?」


「想像通りです」


「何でライバル増やすのよう!」


「イレイザーズのメンツとして呼ばないのもふぐりかなって」


「不義理……ですね」


 打てば響くツッコミありがとう。


 さすがマイスイートハニー。


「墨洲くんは?」


「呼んでほしいなら呼ぶけど?」


「やめて」


 でしょうね~。


 そしてイレイザーズの面々は、浴衣を選んで、着た。


 どの子も、地が良いから、浴衣が抜群に似合っているのは、否定できないことではあるんだけど……ね。

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