第93話あなたは太陽の様で6


 それから、適当にオタ話を繰り広げて、帰宅。


 当然、夕餉を共にするため、夏美も同行。


 玄関を開錠する。


 電子キーも発達した昨今ではあるけど、量コンの台頭によって廃れた昨今でもある。


 結局フィジカルに回帰するのは必然と云える。


 うちも例に漏れず、物理キーで施錠している。


 で、再度言うけど開錠。


「ただいま~」


 と、誰にでも無く、声を発する僕に、


「お帰り雉ちゃん」


 ルンとした声が迎えてくれた。


 ブラックセミロングツインテールの美少女だ。


 ちなみに来ている服装はベビードール。


「御飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し?」


「…………」


 無言で、僕は投影機をオフにする。


「ああ! 何するの!」


 こっちのセリフだ。


「春雉……量子ちゃんにいつもあんなことを……」


「誤解です」


 それっぱかりは、否定せざるを得ない。


「でも……」


 難しい顔をしているところ悪いけど、無粋ですよ?


「秋子ちゃんも春雉好き好きって感じだけど量子ちゃんもですね……」


 まぁ変人にモテるのは否定しないけどね。


 秋子にしろ量子にしろ色々とわけありだ。


 面白くないから、口にはしないけど。


「雉ちゃん!」


「却下」


「何で!」


「自身を省みなさい」


「ケチ!」


 そう云う問題ですか、大日本量子さん。


「秋子。お茶頂戴。夕食は後追いでいいから」


「うん。じゃあ準備するね」


 秋子は靴を脱いで、勝手知ったる、と、キッチンに消えていった。


「じゃ、歓迎するよ夏美」


 僕は、夏美をリビングに案内する。


 それから、秋子のふるまってくれた茶を飲みながら、投影機でアニメを見る。


 夏美お勧めの、ね。


「雉ちゃん! 投影機オンにして!」


 ボイスオンリーで、非難してくる量子だけど、


「してるよ」


 投影機でアニメを見てるんだから、してないわけがない。


「私の投影を許可して!」


「まともな服装になったらね」


「瀬野三の制服!」


「あいあい」


 そして許可を出す。


「雉ちゃん!」


 僕に抱き付いてくる。


 立体映像故に、何も感じないけど。


 アシストの類を使えば、また話は別だけど、今は関係ないだろう。


「モテモテですね」


 夏美が苦笑する。


「因果な渡世です」


 肩をすくめる。


「秋子ちゃ~ん」


 量子は、キッチンで夕餉の準備をしている秋子の方へと、向かっていった。


「おや、量子ちゃん……」


「今日の御飯は?」


「お好み焼きですが」


「私の分も!」


 図々しい奴め。


 まぁ顧みれば、


「どの口が言うんだ」


 って話だけど。


「秋子ちゃんは春雉のメイドさんみたいだね」


「否定はしない」


 都合よく利用しているとも言える。


 お茶を飲んで閑話休題。


「人殺しには慣れた?」


「?」


「オドで人間型の敵キャラの殺戮には慣れたかなって……」


「うん。まぁ」


 もとよりオドはそんなゲームなんだけど。


「ローマエリアはやっぱり……」


「まぁファーストエリアは信者が雑魚キャラだね」


「問題にならないの?」


「それが日本の業だよね」


 節操がないとも言う。


 茶を一口。


 投影機にて、クエストフィールドを映し出す。


 無論、見ているアニメと並行して。


 この程度は簡単だ。


「こういうルートを辿るんだけど……」


「ふんふん」


 僕の説明に、夏美は情報を蓄積させる。


 攻略情報は、あればあるほどありがたい。


 そんなこんなで、アニメを見ながら、ローマエリアの考察をしていると、


「雉ちゃん。夏美ちゃん。夕食を始めるよ?」


 そんな秋子の声。


 ホットプレートが、ダイニングテーブルに置かれていた。


「どうも」


「どうもです」


 そして、オドの話に花を咲かせながら、僕らは夕餉を楽しんだ。


 結論として、秋子のお好み焼きは美味しかった。


 御馳走様。

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