第47話姉は何処に。姉はここだよ。


姉は何処いずこに。姉はここだよ。


そんなやりとりが頭の中で、もう何百回も繰り返されている。


私の頭、もうダメかな。潮時なのかな。買い替え時期かな。



「お嬢さん、ファーネル王国に着いたよ」

「ふがっ…ありがとうございました」



お嬢さん、しっかり寝てたね、と荷馬車のおじさんに言われ、少し恥ずかしくなる。



「じゃ、元気でね」

「ありがとーございましたー!」



大きな声でお礼をして頭を下げる。


王族だった頃むかしじゃ、ありえない光景だ。

でも、今はありえる。だって私は



「もう王族じゃないしね♪」



私はマリア。


元、マリア・リズ・リースレット。

崩壊したリースレット王国の第一王女だった者だ。


ただ今私は、ある人を探して“橋”を渡った先にある、ファーネル王国に来ている。


薬草の栽培が盛んなファーネル王国。

と、同時に、大精霊の聖地でもある。


大精霊。


火、草、水、闇、光の五大属性の長を務める精霊のことだ。


ファーネル王国が薬草の栽培が盛んなのは、草、というか植物属性の大精霊が加護を与えているからだ。



「ハレイちゃん…植物魔法が得意だから、来てみたんだけどな」



いるかな。


まぁ、まずは探して見なきゃな。
















「銀髪の女の子?知らないなぁ」


「いや、見かけたらひっ捕らえて見世物に「バキッ」あぎゃぁぁぁぁ!!!!!」

「こいつが言ったこと、気にせんといて」


「見てないよ」


「見てないな」


「知ってたら売るって」

「おいお前、その辺にしとけって…」




「はぁっ」



全く。失礼な人たちが多いのね。


私の可愛い妹を売るだなんて!命知らずにもほどがあるわ…。



「ここじゃないのかな…」



そりゃ、国の隅々まで調べるのは無理だけど、なんか、来といてなんだけど、この国にはいない気がするなぁ。



「…しゃーなし。宿探すか」



お金はルキ様からたんまり取っ…貰ってきたから、心配は無いし。

いざとなれば魔法使ってストリートパフォーマーみたいなことやれるし、大丈夫。



ーーー真理!ーーー



あぁ、会いたいな。葉鈴ちゃん


最近夢会議やって無いなぁ…そろそろかな?



「嘘つき」



ねぇ、留姫にぃも優希も亜衣も、男衆みんな嘘つきだよ。


国が壊れたら私たちのシナリオだって、この世界にいるかもしれない葉鈴ちゃんを探せるって、言ってたじゃないか。


ハレイシアももちろん大切だ。でも



「それよりも、私たちにとって大事で大切なのは、葉鈴ちゃんだよ」



だから、ごめんね?ハレイちゃん。

あなたを探すのは後。今は葉鈴ちゃんを探さなきゃ。



「どこにいるのかなぁ?私の、私たちの可愛い妹」



崎野葉鈴さーん、って迷子放送みたいに呼べたらいいのに。



葉鈴ちゃんが見つかったらどうしようか。


とりあえず、ドロッドロに甘やかそう。

今まで頑張ったねって褒めてあげて。

それで、それで



「(…そのことを考えるのは後。今はこの世界のどこかにいる葉鈴ちゃんを探さなきゃだね)」



待っててね、葉鈴ちゃん。


今、見つけるから。














「へっくしゅ!」

「レイシアさん、大丈夫?」

「あー、ダイジョブ」



風邪…いや、誰かが私の噂をしているな?



「まだまだ寒いよね〜」

「まぁ、まだ、アールズの月だからねぇ」



なんか、あの髪の話以降、気に入られたのかなんなのか、キーシャさんがよく話しかけてくるようになった。


っし、友達第一号(第二、三号?)(仮)ゲットだぜ!



「あ、ねぇ、レイシアさん」

「なぁに?」

「レイシア“ちゃん”って呼んでいい?」

「!」



まさかのちゃん付け!



「もちろん!私もキーシャちゃんって呼んでいい?」

「うん!」

「キーシャちゃん!」

「レイシアちゃん!」



また一歩、友達に近づいた。















どうして、どうしてどうしてどうして。


どうして私じゃないの。

どうしてみんななの。


何で私からみんなを奪うの。


もう嫌もう嫌もう嫌ッ!



パリンッ



あれ?血?赤い、血だ…。



あぁ、そうか。


みんな、私もそっちに行くね。



もう疲れたの。もう消えたいの。


もう、もう



やめにしたいの。



さようなら、崎野葉鈴。





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