第45話平民の娘


私の名前はキーシャ!

カトレア公国に住む、極々普通の平民。

歳は16歳!お仕事はレースを編むこと。


私の自慢は自分の髪の毛!すごくすごく珍しい銀色の髪なの!

特別扱いは好きじゃないけど、みんな私の髪のことをたくさん褒めてくれる!嬉しい!



今日は、二つに分けた髪を、三つ編みにしてみた。花の髪飾りも、もちろんつけている。



「おっはようございまーす!」

「「「おはよー、キーシャ」」」



職場で知り合った友達、リカ、ソラ、サヨが声をかけてくる。

3人とも、黒髪赤目。職場では三つ子って言われている。



「あ、キーシャ」

「何?リカ」

「聞いた?今日、新しい子が入ってくるんだって、私たちと同い年」

「そうなんだ」



どんな子が入ってくるのかな?

新入りさんなんて、半年ぶりだからわくわくする!



そうそう、私が務めているのは、物作り屋さん。

私が担当しているのはレース編み。

他にも、雑貨作りや食材作り、いろんなのがある。


職種がある割に、高レベルな技術が求められるから、そう簡単に新入りさんは来ない。

だからなのか、みんなソワソワしている。



ガラッ


「あ、店長来た」



講堂に入ってきたのは店長。



「おはようございます。皆さん」

《おはようございます》

「もう知っているとは思いますが、今日は新たな店員が来ます」



なんか、初等学校みたいな始まり方だけど、これがこの店の始まり方。なんでも、店長は昔、学校の先生をしていたらしいのだ。


その名残でこうなったいるのだと、前に先輩から聞いた。



「入ってきなさい」

「はい」


ガラッ


「ぇ………」



入ってきたのは




銀髪の女の子。




「初めまして。今日からここで働かせていただくレイシアと申します。よろしくお願いします」



平民にしては、恐ろしいほどに完璧な挨拶とお辞儀。


一番に考えたこと、それは




この子、本当に平民なの?



「レイシアさんは、アリス帝国から来たそうです。不慣れなことも多いでしょうから、皆さん、助け合うように」

《はい》

「では、レイシアさんはレース編みの班へ」

「わかりました」



どうして、何で。よりによって私がいる班なんて。



〈おい、キーシャ、大丈夫か?〉

〈だ、大丈夫だよ、リカ〉

〈なら、いいんだけど〉



リカが声をかけてくれる。


本当は、多分、大丈夫じゃない。



「(大丈夫、大丈夫。私なら大丈夫)」



でも、とりあえずは平常心を取り戻さなきゃ



コツ コツ



来た。



「初めまして、レイシアさん。私はキーシャっていうの。よろしくね!」

「!…うん、よろしく、キーシャさん」



挨拶をすると、レイシアさんは、にっこりと笑った。













「レイシアさん…この仕事、初めて?」

「本格的にやるのは、これが初めてです」

「ほわぁ…」



私はレイシアさんが作ったレースに、見惚れていた。


同じ糸、道具を使っているはずなのに、何故こうも違うのだろうか。


才能か?才能なのか?あ?



「(っと、仕事中に雑念は考えるな)」



自分の頬を、パンパンっと軽く叩く。


チラッと横目で、レイシアさんの手元を見てみる。



「(え、何あれ凄い)」



レイシアさんの手元は、ゆっくり、けれど確実に綺麗なレースを編んでいた。


神の所業かよ。



「(だーかーら!仕事だってば!)」




キーシャは1人、心の中で自分と格闘していた。




「(ま、まぁ、落ち着きなさい、キーシャ。落ち着くのよ)」



大丈夫。大丈夫よ。


レイシアさん、良い子よ。そんな匂いがするもの。



自己完結をするキーシャであった。





レイシアは…



「(何で私あの子に見られてんだろ…)」



と、考えていたそうな。

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