第2章 カトレアの平民

国が壊れた日


ごうごうと燃え盛る城。


崩れ落ちる装飾の数々。



ーーーあぁ、思い出が、消えてゆくーーー
















俺の名はユーキ・リテモ。リテモ男爵家の三男坊だ。


俺は今、職場だった城を見ている。



燃えてる城だ。



俺の主人…姫さまがやることなら、何か理由があるのだろうと思って、黙ってきた3、4年?間。



姫さまが温めてきたものの集大成というのが、この燃えてる城だ。



「ホント、ある意味すごい執着心」



アメジストさんの話によれば、8年も前から考えていた計画とのこと。



「師匠!ラフル師匠!」

「アサミ、落ち着きなさい」

「落ち着いていられますか!?」



斜め前には言い争っている(一方的に女の人の方)女の人と老人がいる。


黒い髪に、白い瞳が特徴的な人だ。


たしかあの人は…



「アサミ王宮魔導師様、ですか?」

「「?」」



声をかける。



「そうですが…君は?」

「自分は、ハレイシア姫の近衛兵です」

「王女さんの!」



役職を名乗ると、老人の方が声を上げる。


ハレイ様を知っているのだろうか。



「コホンッ。失礼。王女さんは今どこに?」

「わかりません」

「わからないって…あなた護衛でしょう!」



そうは言われてもな…



「アサミ。落ち着きなさい」

「でも!」

「でもじゃない!」

「っ…」



なんか説教が始まった。そっとしておこう。



「…?」



あれ?本当に、姫どこだ?



「アルさん!」

「ユーキさん」

「姫は?」

「それが…」


ザッ


「「?」」

「アル。私たちにもお聞かせ願えるかしら?」

「アメジスト…王太子殿下にマリア王女殿下まで…」



うわ、マジかよ。ルキ王太子イケメンだな。



「わかった、話します」

「ありがとう。アルディア」

「ハレイシア姫は、別のルートで逃げると言いました」

《………》



別の、ルート。



「恐らく無事とは思いますが、それ以外は」


ドォォォォォォンッ!!!


《!?》



城が、崩れる!?



「アルディア!責任は僕が取るから転移魔法を!」

「わ、わかりました!」



パチンッ、と指を鳴らし、転移魔法陣を複数個展開させるアルさん。


相変わらずスゲェの



「皆さん!こちらはお逃げください!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「こっちだ!逃げろー!」



今日は転移魔法で逃げてばっかだなぁ…



「ユーキも」

「あぁ」



姫さま、どうか無事でいてくれよッ!















リストの月、第15日建国記念日。



リースレット王国、崩壊。



第七王女、一名が行方不明。



今日は国が作られた日。

今日は国が壊れた日。



さようなら、私の国。

さようなら、みんな。



さようなら。ハレイシア。














「ねぇ、聞いた?」

「何を?」

「キーズ大陸のリースレット王国壊したの、王女様なんだって」

「えー!本当?」



最近。この噂ばかり。


王女様が自分の国を自ら壊すなんて、ありえないのに。


そんなの、デタラメに決まってる。



「はぁ、早く来ないかなぁ」

「なぁに、キーシャ」

「うん?来ないかなぁって」

「またぁ?」



いいじゃないか。待ち遠しいんだから。



ガラッ


「おはようございまーす」

「あ、おはよう!」



来た!私の親友!



ちゃん!」






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