第40話夢とおかえりと成長と


『ねぇ、ーーちゃん。七色の祈り、面白いでしょ』


ーーーまぁまぁだね


『えー!こんなに面白いゲーム、あんま無いのに!』


ーーーふふっ、やっぱ私は


『農業ゲームが良いって言うんでしょ?』


ーーー正解。


『おーい!真理ー!ーー!』

『あ、優希じゃん』


ーーー優希と…雨と、亜衣君だね


『みんな来たんだ』

『何話してるんですか?』

『ゲーム!』

『あぁ』


ーーー雨、そんな反応したら可哀想だよ


『そ、そんぐらいじゃ折れない!』

『本当かよ』

『本当かな?』

『もう!優希も亜衣もヒドイ!』




あぁ、こんな幸せ、いつまでも続くと思ってたな。


優希も、真理も、雨も、亜衣も、私も。

みんなみんな、幸せだった。



「「「「また明日!ーー!」」」」


ーーーうん、また明日!








ーーー雨…?真理?優希?亜衣?


ーーーどうして?何で返事しないの?



ドウシテ?















雨がいない。真理がいない。

優希がいない。亜衣がいない。


みんなが、いない。



はぁ…もう、もうやめてしまおう。


こんな人生生き方、やめてしまおう。



もう、やめにしよう。

















カンッ コンッ カンッ コンッ


「………」


パサッ



ここは…



「………夢、かな」



ここは見間違うはずがない。私の寮室。


何で、どこかわからなかったんだろう。



























「姫さま?」

「あ、おはよう。アメジスト」

「おはようございます。早起きですね」

「んー、なんか起きちゃって」



そう言う私をスルーして、カーテンを開けて、溜息をつくアメジスト。


もういい加減、慣れたけども。どこまでもラブラブなカップルだな、あの2人。



「(ま、今は遠距離恋愛。連絡手段無しの状態だけど)」



ある意味、この状況を耐えているアメジストとアルの精神は、強いと思う。


基本的な彼女さんだと、浮気とか疑ってそうだからね。



「告げる言葉を伝え合ったのもあるのかな」

「何か言いましたか?」

「ううん、何も」



きっと、頭の上にはてなマークが浮かんでいるであろうアメジスト。



「今日もあの…シャナ男爵子息と会うんですか?」

「わかんないわ、リク君にも予定があるだろうし」

「そうですか」



リク君と出会って三ヶ月。


何が言いたいか。



魔王討伐の旅出発から半年が経ったのだ。



なーにが言いたいのか。



実は今日、姉様たちが帰ってくる(予定)の日だったりする。



「楽しみですねっ」

「そうだね。アル、姉様、兄様、サンディー、元気かな?」

「元気でしょう。そうでないと困ります」



少しテンションが上がっているのか、ソワソワしているアメジスト。



カランカランカランッ!!


「「!」」



これは……帰還の鐘の音だ!



「姫さま!」

「えぇ!行きましょう!」



この後、廊下を走ったため、偶然通りかかったレフィーネ先生に怒られた。













「姉様、兄様、アル、サンディー、お帰りなさい!」

「お帰りなさいませ」

「ただいま。ハレイ、アメジスト」

「ただいまー!ハレイちゃん!」



兄様が一番、姉様が二番、と馬車から降りてくる。


そして、姉様が勢いよく抱きついてくる。



「わっ!」

「会いたかったよー!」

「っと。大丈夫ですか?姫さま」



聞き覚えのある少し低めの声。私の方を支える手。



「…ユーキ?」

「そですよ。姫さま」

「え、えぇぇぇぇぇ!!!!」



低めの声の持ち主はなんと、ユーキだった!



「ユーキ!久しぶり!」

「お久しぶりです。姫さま」

「すっかり敬語も板についちゃって!」

「団長と同じこと言ってます…」



団長?あぁ、ルドルフ・イラータか。

あの人、元気にしてっかなぁ



「ぶー!ハレイちゃんったらお姉ちゃんのこと見てくれない!」

「駄々っ子か!」



公の場で、あんまこーゆーことさせんな!

兄様たちが引き気味じゃん!



「ハレイちゃん、たっだいま」

「あ、サンディー、お帰りなさい」

「俺、頑張ったよー」



ポフッと抱きついてくるサンディー。


ん?んん?



「サンディー」

「なーにー?」

「あなた…身長伸びましたね!?」

「ハレイちゃん、口調戻ってる」



ポンポンッと頭を撫でられる。

くそぅ…明らかに身長が伸びてやがる。


この半年で一体何が…。前は私と同じくらいだったのに(小さかったサンディーさん)。


多分、私が150cmくらいなんだよね。で、サンディーは160㎝…



「10㎝くらい伸びてる〜…」

「え、あ、な、なんか、ごめん…」

「「おのれサンディー、よくも我が妹を」」

「う、うわぁぁぁぁ!!!!」



キラーンッて光ってるよ、兄様と姉様の目。

何か企んでるような目だよ、これ。


サンディー、ご愁傷様(凄くいい笑顔で)。



「アル…お帰りなさい」

「ただいま。僕の宝石、アメジスト」



こっちはこっちでラブラブだしよ



「アリュート、髪に葉がついてるぞ」

「?髪に歯はついてないぞ?」



なんかこっちはバカだしさ



「本…本…本が読みたい…図書室…」

「落ち着けばー?パラメド」



こっちは禁断症状みたいなのが出てるし。


これってさぁ…





カオスじゃね?















その後。巫女・勇者お帰りなさい会(誰が命名したんだか)でどんちゃん騒ぎが行われた。


言葉がおかしいんじゃないかって?


仕方ねぇじゃねぇか。こちとら酒飲まされたんだよ、酔ってんだよ、ははっ、は…。














ねぇ、いつになったら言えるの?


それは、まだ…


いつになったら教えるんですか?


もう少ししてから



いつになったら、あの子とまた遊べるの?



それはまだ、少し先。



この国が壊れたら?



そうそう、この国が壊れたら。




国が壊れたら、全てが終わり、全てが始まる


国を壊したら、始めよう。終わらせよう。



国が壊れたら、このシナリオはおしまい。


次は僕たちのシナリオだ。



待っていてね、必ず迎えに行くから





ーーー葉鈴ーーー





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