第35話私の友人、悪役令嬢だった
キュールの月。第11日。
今日は、卒業生が来校する日だ。
それが何かって?
イベントだよ。イベント。
ヒロイン…姉様が兄様…ルキルートだった場合、姉様が兄様と一緒に踊るのだ。踊り終わると、そこへルキルートの悪役令嬢、アミリア・ノーウェスが………アミリア?
アミリア・ノーウェス?
「(私の仕えてる子じゃん!)」
アミリアって、アミリアちゃんじゃん!
あの子、悪役令嬢だったの!?
いや、たしかに会った当日は、如何にも〜な雰囲気を醸し出していたけどさ!
アミリアちゃん、めっちゃ良い子だよ!?
待って待って待って待って。
ガタンッ
引き出しから乱暴に、一冊のノートを取り出す。
これぞ、乙女ゲームに転生しちゃった人のお助けノート。その名も
進行状況確認ノート〜!
コホンッ。
まぁきっと、乙女ゲームに転生した人は大体作るであろう、ゲームのことと変化したことが書いてあるノートだ。
さて、悪役令嬢ポジは…
「ルーカスルート、リティア・ファ・リースレット…アリュートルート、サファイア・フィア・リースレット…パラメドルート、サナサ・フォン・ソラファ…り、リジーラルート、ララ・フォン・フィーラ…!?」
お分りいただけただろうか。
そう、全員、私の知り合い・顔見知りなのである。
うっそぉぉぉぉ……。
何で?よりにもよって、何で私にばっかこう来る?
大きなイベントには絡まれたり自爆したり…そればっかやん。
「アミリアちゃんはともかく…ララちゃんが悪役とは…」
あのふわふわした子がねぇ…。
「今の姿からは想像できないな」
「何がですか?」
「どりゃぁぁ!!」
全力で抱きしめていたクッションを投げつける。もちろん、アメジストに向かって。
「それはそうと」
「何だよ!」
「あの名前知らない歌。「ら」でいいですから歌ってください」
「ら」でいいから?どゆいみ。
「らーらーらーって感じに」
成る程。
「了解。ら〜らららら〜、ら〜らららら〜」
「姫さまごめんなさい」
「ん?」
「聞いてるこっちはわかるけど、文面見てる人たちではさっぱり分りません」
「そーゆーこと言わないッ!」
本当に、本当に申し訳なさそうに謝りながらとんでもないことを言いやがるアメジスト。
「それよりも、何だったんですか?」
「何年か前に、ゲームの話ししたでしょ」
「何年か前と言わず、最近もしたような」
「そう?」
「はい」
したっけな。ま、いいや。
「とりあえずはね、えーっと…乙女ゲームには悪役という、ヒロインのキャッキャウフフライフを邪魔する輩がおりましてですね……それで………」
「要するに、姫さまのご友人方が皆悪役だったと、そういうことですね」
「ソウイウコトデス。ハイ」
長ったらしく、途中つっかえのあった私の話を、アメジストは簡潔にまとめる。
「くっ、羨ましい頭の転回…」
「なーに言ってやがるんですか」
呆れた目で私のことを見てくるアメジスト。
「とにかく。どうするんですか?」
「どうするって…何が?」
「縁を切るか、このまま仲良くするか」
「え」
縁を、切る?
「だったそうでしょう?このままは仲良くしていれば、姫さまが死ぬ可能性が上がってくるじゃないですか」
「そんなのっ…」
わからない。言おうとしたけど、その通りだとも思ってしまう。
「私としては“消してもいい”んですがね」
「消す…?」
この学園から?
この国から?
それとも…この世から?
「やめてよ怖いっ!」
「申し訳ありませんでしたー」
私の斜め上を見ながら、口笛を吹き、知らぬふりをするアメジスト。こんのやろっ…
「ま、仲を続行するのであれば」
「あれば?」
「自分の身は自分で守ってください」
「えぇ………」
何でよ。いやたしかに、自分の判断で決めるから、私の身を守れ!とは強く言えないけども…。
だからって、ど直球すぎませんかね。
「いいですか?」
「…ワカリマシタ」
私に反論の余地は無かった。
「ハーレーイーちゃーんー!」
「わっ、姉様。こんばんは」
「はい。こんばんは」
ニコニコ笑顔で、私に抱きついてくる姉様。
「それでー?私に教えてもらいたいことって何かな?」
姉様を部屋に呼んだのは私自身。
「それで、お話ってなにかなぁ?」
「イベントについてと、まぁ、いろいろ」
「…そっかぁ…お姉ちゃんに何でも相談なさい!」
胸を張り、そう言う姉様。頼もしいですよ。と言う言葉は、心の中に留めておく。
変な調子に乗られても、困るからね。
「んー…先言っちゃっても良いですか?」
「良いよー」
「実は…」
「仕える者が悪役ねぇ…」
「はい…」
こういった場合は、どうしたら良いんでしょうかねぇ…
「うーん」
「何が正解なんでしょうか」
「…好きにやっちゃえば?」
「は?」
え……え?ちょ、待っ…ドユコト?
「何が正解なんて無いよ」
「そうなんでしょうか…」
「ハレイちゃんが良いと思うことをやれば良いんだよ。ね?」
…………。
「…そう、ですよね。うん。わかりました。私なりに、頑張ってみます」
「それでこそ私の妹ッ!」
「わっ」
急に抱きついてこないでくださいよ、姉様。
「さ!大広間に行きましょう!」
「ちょっと待ってくださいよ!」
こうしていつも、私は周りに助けられる。
私は、幸せ者だなぁ。
余談だが、この後式典にて、兄様に
『妹成分が足りない…』
と言われ、姉様と一緒に抱きしめられてた。
10分も。
あれは足が痛くなった…。
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