激動編
第33話またまた時が経ち
ふぅ………時が過ぎ去ってしまったぜ☆
いや、ホントに、マジで。
現在、カトル歴171年。キュールの月頭。私は
「《癒しの言の葉。修復》」
マリー姉様の言の葉特訓を見ております。
「ふぁー、今日の課題全部終わったー!」
「お疲れ様です。姉様」
私は3年生。姉様は5年生。兄様は卒業して王宮でとう…陛下の補佐。
それぞれが大体シナリオ通りに動いている、今現在。
国壊しの話をした3年前のあの日から、特に“目立った行動”はしていない。
バレると困るからね。
兄様からの手紙によると、ラフル老師あたりにはバレてそう、とのこと。でも、止めに来る気配が無いので、今のところ放置でOKということになっている。
ギュッ
「わっ」
「ハレイちゃん成分ちゅーにゅー!」
「もう…仕方ありませんね」
姉様や兄様のシスコン具合も然程変わらず、結構平和に過ごしている。
とてもじゃないが、来年、自国を国壊しするなんて思えないほどだ。
「というか、今年がラスボス討伐ですよね。こんな、のらりくらりで先生方は許してくださるのですか?」
「許してくださったのです」
これは、権力使ってねじ伏せたね。
大方、これ許してくれなきゃあれ(魔王討伐)やんない!とか言ったんだろう。
乙女ゲーム・七色の祈りは全部で6部構成。
話の大元となる『魔王』は、第5章の終わり頃に、7人の勇者と、言の葉の姫により封印される。
第6章は魔王の魔力で穢れた地域を浄化しに行く、という内容だ。
いや、魔王討伐第6章に回そうよ、製作者。
「この3年間…特に何もなかったね」
「そうですね」
サファイアお姉様からの嫌がらせ等はあったが、ユーキがねじ伏せ、アメジストたちが魔法で回避し、兄様が元凶をぶっ倒してた。
私は特に何もせず、要請があれば、植物魔法で応戦していたくらいだ。
「そういえば、もうすぐアルの誕生日だね」
「え?あ、あぁ。アル、リストの月でしたもんね」
「しかも建国記念日に近いという」
アルディアの誕生日はリストの月第12日。
簡単に言えば、11月12日だ。
後1日早ければ……チッ。
「あと1日早ければ、◯ッキーの日だったのにね」
「姉様、それ、多分アウトだと思います」
ピー音入ってたけど、ほぼほぼ言っちゃってるしねぇ〜
でも、姉様も同じ考えだったんだ。
思考回路が似てんのかな……。
「あはは〜、大丈夫だって。ここには誰もいないから」
「本当にいないかな…」
アメジストとかいる可能性が…。
「もし聞かれてたら、私が言の葉で記憶をいじってあげる!」
「国家魔法を、そう簡単に使われては困りますッ!」
言の葉魔法は、国の魔法。
その国独自の“言の葉”がある。
リースレットの言の葉は「癒しの言の葉」
「修復」。
アリス帝国の言の葉は「攻撃の言の葉」。
「総撃」。
ラストリア帝国の言の葉は「護の言の葉」。
「結界」。
とりあえず、有名な3国だけ考えてみた。
「ラストリアとアリスの巫女さんって、どんな子なんだろうね」
「さぁ………会ったことがないのでわかりませんね」
「…ねぇ、七色の祈りの完全版って、知ってる?」
完全版?
「何ですか?それ」
「リースレット王国が崩壊した後の、アリス帝国を舞台にしたお話なんだけどさ」
「そんなのあるんですね。多分、それやる前に私死にましたから」
「メッッチャ面白かったよ」
それ今言わないでよー、やりたくなっちゃうでしょーが。
「あぁ、それ言われたらゲームが恋しくなるじゃないですか」
「ごめんごめん…………にしても、もうゲーム開始から5年か。早いね」
「はい」
少しの沈黙を経て
「国壊し、頑張ろうね。こんな縛り付ける国なんか、壊しちゃえ。2人で、ううん、みんなで、自由を見よう」
「………」
姉様は、この国で何を聞き、見てきたのだろうか。
それは多分、私が見てきたものよりも、私が調べてきたものよりも、大きく、重く、つらいものだろう。
きっと、兄様も同じだ。
アルも。アメジストも。
私だけ。
私だけだ。
何も知らないのは。
兄様たちは、愛されてるからいいな、とは思ってたけど、愛されてる分、背負うものが重いんだ。
「(そう考えると、私の人生って楽だよな…兄様たちの人生は想像できないわ)」
「ハレイちゃん」
「何ですか?」
姉様はにっこり笑って
「ハレイ、私と旅をしよう。美味しいもの食べて、綺麗なものを見て、いっぱいいっぱい楽しもう!」
「………………」
その笑顔の裏に隠された気持ちを、私は知らない。
でも
「…はい。行きましょう」
少しでも、それが助けになるのなら、私は喜んで、あなたの側にいましょうか。
そう言って、私は微笑んだ。
ハレイシアが微笑んだ時、マリアの心の中は
「(きゃぁぁぁぁ!!私の妹が笑った!愛妹が、愛妹が笑った!よっしゃぁぁぁぁ!!これで5年は生きていけるわ!あーはっはっはっはっはっ!)」
と、相当荒ぶっていたそうな。
そしてそれを陰から
「(こんのクッソっ!マリア、よくもハレイの笑顔をあんな近くで見て!羨ましいじゃないかぁぁぁぁぁ!!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)」
見ていたルキが、これまたマリアと同じように心の中で荒ぶっていました。
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