第31話夢から覚めればシスコンが…


『ねぇ、母ちゃん!お菓子かって!』

『ダメよ。昨日買ったでしょ』

『えぇー…あ、ーーーー姉ちゃん!』

『まぁ!ーーーーちゃん!』



ここは、どこ?城下町?


私、いつの間にそんな場所に…



『ーーーー姉ちゃん、大丈夫?』

「え、あ、大丈夫だよ。ーー君」



名前、言えたけど…この子誰?


この女の人も、男の子も、私のことを知ってるみたいだし、何なの?



「………え、麻のワンピース?」



自分が身に纏っていたのは、地味だけど上質な生地が使われたドレスではない、青い麻のワンピースだ。


汚れないようになのか、白いエプロンが腰回りに付けてある。



『ーーーーちゃん?本当に大丈夫?』

「大丈夫です。おばさん」

『そう?なら良いのだけど』



女の人が心配そうに私を見てくる。


そして何を思ったのか、飴玉を一つくれた。



『仕事が楽しいのはわかるけど、根は詰めすぎちゃダメよ?良い?』

「はい」



何でか私はにっこりと笑う。



『ばいばい!ーーーー姉ちゃん!』




『じゃあね、ちゃん』



レイシア?レイシアって誰?



私。私だよ、忘れたの?



そうか。レイシアは私か…え、でも、私は



あなたは私。私はあなた。

あなたはレイシア。私もレイシア。



違う、違う違う違う。私、私は



















「はっ…はっ…はっ…」



何だったの。今の夢。


なんか…………怖い。



「落ち着け…大丈夫」

「だーじょーぶ?」

「うぎゃあ!?」



マリー姉様!?



「うはは、やっと気づいた」

「やっとって、いつから居たんですか!」

「ざっと1時間くらい前」

「怖っ、こっちの方が怖ッ!」



このシスコン野郎め!可愛いから許してやる!ちくしょー!



「何かあったの?お姉ちゃんに相談してみ」



私の頭を撫でながら、優しく微笑み、そう聞いてくるマリー姉様。



「いえ、なんか、不思議な夢を見て…」

「そっか〜」

「……ていうか、どうして私の部屋に」

「んー?アメジストちゃんに入れてもらったの」



おのれ、アメジスト。よくも…。



「そうですか。着替えるので表の部屋に居てください」

「ちぇ」



ちぇって何よ。着替え見ようとしてたのかよ



「残念ながら、私にはマリー姉様のような肉付きの良い体でもなければ、美形でもありません。見て良いものでは無いと思いますが」

「良いじゃない!可愛い妹の身体を見るくらい!」

「良く無いつってんでしょ」



マリー姉様の頭に、凄く軽くチョップを当てる。



「痛ーい。ハレイちゃんの意地悪ー」

「裸を見ようとしたあなたが悪い」

「はいはい。表の部屋で待ってるね」

「はい」












気づけばもうリースの月。マリー姉様の誕生日、アメジストの誕生日が過ぎ、季節は夏季に入ろうとしていた。


ネグリジェを脱ぎながら、もう日が昇っている外を見る。



さて、話は飛ぶが、第3学年、物語で言う第3章には最重要イベントがある。



「第3章、最重要イベント…夏の祈り」



マリアは学年全体で、学習旅行へ出かける。

そこで偶然、干からびた川を見つけるのだ。


水が飲めない動物たちを見て、心を痛めたマリアは、せめてこれだけでも、と神に祈りを捧げ始める。

すると、何と不思議か、川が徐々に潤ってきたのだ。


それを見かけた攻略キャラの発言により、マリアは自身に【言の葉】を操る力があることを知る…。



「物語の要になってくる部分よね…」

〔ハレイちゃん、まだー?〕

「今行きます」



いろんな部分が緩いマリー姉様は、どんな行動を起こすのだろうか。


気になる。












「お待たせしました」

「可愛いー!」



私が着ているのは、青い無地の、でも上等な生地が使われたドレス…と呼べるのか分からない服。ワンピースの進化系みたいな感じ。


それのどこが可愛いのだろうか。



「そんなに可愛いですかね?」

「可愛いよ、流石私の妹」



そう言って、私の頭を撫でてくるマリー姉様。


私より、姉様の方が可愛くて綺麗なのに。



「じゃ、食堂に行こう!」

「おー」

「もう!可愛すぎる!」



ちょい、マリー姉様、私に抱きついていると、食堂に行けませんぜ。

私はお腹が空いたのです。



「マリア様、姫さまが…」

「あ、ごめんね、ハレイちゃん」

「い、いえ」



さぁ、朝食に向けて、再度出発だ。














〈マリアがハレイと仲良くしている…僕も混ざりたい、けど、ダメだ。男の僕が入って良い空間では無い。チクショウ、どうして男に生まれてきちまったんだ。チクショウ〉

「あ、のー、兄様?」


バッ


「おはよう、ハレイ、マリア」

「おはようございます。兄様」

「おはようございます。ルキ王太子殿下」



食堂に行くと、兄様が何やらブツブツと喋っていた。一人で。


心配で声をかけてみたところ、冒頭のように爽やかな笑顔で挨拶をしてきた。



「2人…4人も一緒に食べるかい?」

「良いんですか?」

「もちろん。僕とアメジストたちが買ってくるから、2人はここで待っててね」

「「はい」」



そう言うと、兄様は立ち上がって



「ねぇ、ハレイちゃん。」

「何ですか?マリー姉様」

「ハレイちゃんはさ、何エンドが好き?」

「エンド?」



誰のルートのエンドだ?



「ハッピーエンドと、バッドエンドは、どのキャラも大体共通でしょ?どっちが好き?」



ハッピーエンドは結婚。

バッドエンドは国崩壊だ。


ハッピーエンドのがもちろん好きだけど、私たちが目指してるのは、バッドエンドである国崩壊だからなぁ…。



「私は、バッドエンドの方が好きです…」

「あ、ハレイちゃんも?」

「え、“も”?」



ま、まさか



「私も国壊しエンド好きなんだー!実際にやってみたいけど、めんどくさくてさぁ」

「………………マリー姉様」

「何かな?」

「今日、私の部屋に来てくれませんか?」

「?もう行ったよ?」



そうだ。この人今さっき来てた。



「夕方です。良いですか?」

「良いよ〜」

「マリア様、姫さま、お待たせしました」

「あ、野菜パスタだ」



アルが両手に料理を持っている。腕、プルプルしてるよ?ぷぷっ。



「それじゃ」

「「いただきます!」」

「「「いただきます…?」」」



やっぱ…ここのパスタ美味いわ…。

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