第30話シスコン気味…になりつつある?


イベント。


『木漏れ日の昼食』


から3日。シューラの月第10日。

(簡単に言えば、4月10日)



本日は、お休みの日。本来ならば、自由時間のはずなのだが



「ハレイシアちゃん。このクッキーも美味しいよ」



何故だか、マリアお姉様が部屋に来ている。



「ありがとうございます………美味しい!」



いやね、クッキーは美味しいんだけどもね。


何で部屋ここにいるの?



「あの、お姉様」

「ん?どうしたの?」

「どうして、ここに来られたんですか?」



ちょっと聞いてみる。



「んー、そうだなぁ……ハレイシアちゃんはさ」

「はい」




「七色の祈りって、知ってる?」




「…………………………………え?」



今、なんて言った?



「その様子だと、知ってるのかな?」

「え、あ…あっ」



バレちゃった、どうしよう…。



「別に何もしないから、ね?」

「はぁ、そうですか…」



私の手に、自分の手を重ねてくるマリア様。



「前世の名前は美波穂希。高校三年生だったの。ハレイシアちゃんは?」

「私はまだ…ゲームのこと以外思い出してなくて」



すみません、と謝る私。



「謝らなくていいんだよ。ゲームは?全クリした?」

「しました。逆ハールートも全部」

「すごい!」



心の底から喜んでくれているようで、とても嬉しい。マリア様のこんな笑顔、初めて見たかも。


姉妹なのに。



「いやぁ、妹が転生者だとは思わなかったよ〜」

「そうですよね。私も思いませんでした」



本当は、薄々感づいていたなんて言えない。



「これからは、たくさんお話ができるね!」

「はい!」

「そういえばさ」

「?」



口に手で筒を作り



〈どーやってアルディアを執事にしたの?〉



と、言うことを聞いてくるマリア様。



「あー、それはですね…」





「そんなことがあったんだ、大変だったね」

「隠し通路開けちゃった時は、本当にビビりましたよ」

「同じ状況だったら、私逃げ出してる」



苦笑するマリア様。こうしてみると、年頃の少女といった感じだ。



「ねぇ、ハレイシアちゃん」

「何でしょうか」

「ハレイちゃんって呼んでもいいかな?」



手をいじりながら、そんなことを聞いてくるマリア様。



「そんなの、もちろんですよ。全然OKです」

「!、ありがとう!あ、私のことも、なんか呼び名で呼んで!」



なんかって何、なんかって。



「そうですね…マリアお姉様…」

「国王様は、私のことマリーって呼んでるよ?」



へーか、短い名前を更に短くしてどうすんですか。



「じゃ、マリー姉様で!」

「決定!」



嬉々とした様子で賛同するマリア様…マリー姉様。



「ハレイちゃん!」

「マリー姉様!」

「ハレイちゃん!」

「マリー姉様!」




しばらく名前の呼び合いが続いた。











「じゃあ、また明日ね」

「はい!」


ガチャンッ



“また明日”。


その言葉が何故、マリー姉様の口から出てきたのか、それは



「(明日…一緒に登校する約束をしちまったからだよぉぉぉぉぉ!!!!)」



今さっき話してて気づいた。



マリー姉様、シスコン気味になりつつある。



なんでわかるかって?


話の途中に、


「ハレイちゃんとずっと一緒にいたい!」


だとか。


「ハレイちゃん、ずっと私の可愛い妹でいてね」


だとか。


「ハレイちゃん、ハレイちゃんは私だけの妹だから、誰とも付き合わないでね」


だとか。



もうね。シスコン通り越して半ヤンデレだよこれ。


何だよ、私だけの妹って。何なんだよ。



「はぁ〜、敵がいなくなるのはいいけど…」



めんどくさいことになりそうだ。














僕はリースレット王国第一王子、ルキ・メルディア・リースレット。


突然だが、僕は今、物凄く驚いている。



僕の愛妹、ハレイシアに敵意を向けていた、もう一人の妹、マリアが、なんと、ハレイと仲良くしだしたのだ!



これは…これは…由々しき事態!

(“由々しき事態”の意味わかってない)



このままじゃ僕の可愛い妹が…取られるッ!



「(あぁぁぁ、どうすればいいんだ!)」



でも…二人が仲良くしてくれるなら、良いことなのか?



「(い、いや、仲良くすると見せかけて、ハレイに怪我させるかもしれないっ)」



それは大変だ!


で、でも、本当に仲良くしてるだけでは?


でも、ハレイが聖なる祈りを発現させた時は、ものすごく睨んでたし…。



「(あぁぁぁ、どうすればいいんだよ!)」



もう頭がパンクしそうだ。


アメジストとアルディアは国壊しをするって言うし、ハレイには幸せになって欲しいし、マリアは四大貴族の子息を侍らせているし、でもなんか大丈夫そうな気がするし…はぁ、胃が痛くなる一方だ。



「でもまぁ…いっか…」



ハレイたちが、幸せなら………はぁ。










サァァッ


「うぅ…」



な、なんだ、悪寒がするぞ



「なんなんだよ〜」



今日は良いことがあったようで無かった日。


マリア…マリー姉様が、シスコン気味になっていた。


この2、3日で何が起きた。何があった。



「アメジスト〜、ハニーミルクティー」

「はい」



お、いつの間に用意してたの



「って冷たっ」

「1時間ほど前に作ったものです」

「今作ったの頂戴!?それよね!アメジストが持ってるそれッ!」



湯気が出てるよ!そっち渡せよ!



「何故、これを差し上げなければならないのですか」

「私一応あなたの主人だよ!?」



主人を敬え!



「それがどうかしましたか?私は暖かいのが飲みたいのです」

「私だって飲みたいっ!」

「冷たいのも美味しいですよ。それにもったいないです」



うっ、たしかに…。



「……わかったわよ。飲めば良いんでしょ。飲めば」


ゴクッ


「あ、美味しいじゃない」

「でしょう?」

「……しょうがないわね。こっちを飲んであげるわ」

「んー」



飲みながら返事をするな。



この後、二人でハニーミルクティーを飲みながらゆったりしていた。



シスコンからの攻撃、大丈夫だよね?

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